薬物依存症ブロガー「早大卒シャブ太郎」さん、前科密告されて退職勧奨に…

薬物依存症ブロガー「早大卒シャブ太郎」さん、前科密告されて退職勧奨に…

薬物依存症ブロガー「早大卒シャブ太郎」さん、前科密告されて退職勧奨に…

薬物依存症ブロガー「早大卒シャブ太郎」さん、前科密告されて退職勧奨に…

薬物依存症の治療や過去に逮捕された経験などをつづったブログから、本名や勤務先を特定されて、会社に前科を「密告」された男性がいる。早大卒シャブ太郎さん(仮名)だ。

早大卒シャブ太郎さんは、覚醒剤をやめて6年となる。同じ会社で約15年働き続けてきたが、退職せざるを得ない状況に追い込まれている。

いったい、なぜこのようなことになったのか。早大卒シャブ太郎さんに聞いた。

●前科を隠して就職「賞罰欄のない履歴書」選ぶ

早大卒シャブ太郎さんの卒業校は、名前のとおり、早稲田大学だ。薬物と出会ったのは大学4年次のころ。当初はうつ状態に悩み、精神科で処方される睡眠薬を飲んでいたが、徐々に「合法ドラッグ」とよばれる薬物を使うようになった。

大学卒業後は早稲田大学大学院に進学。しかし、薬物をやめられず、「合法覚醒剤」と呼ばれる処方薬「リタリン」に依存し、その後、合成麻薬のひとつであるMDMAも使用した。

MDMAを買った日、売人に『シャブもあるよ』と言われたんです。翌日、シャブ覚醒剤を買って初めて使い、やめられなくなりました」

大学院は2年次に中退。フリーターをしながら、覚醒剤MDMAコカインを使い続ける日々を送っていたが、2000年代半ばに覚醒剤取締法違反で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を言い渡された。

現在働いている会社に応募し、採用されたのは、その判決から1年後のこと。履歴書は賞罰欄のないものを選んだ。面接でも、前科に関することは一切聞かれなかったという。

「薬物依存症の治療はまったく受けていませんでしたが、採用されてから約8年ほど、不思議と『覚醒剤を使いたい』という欲求に駆られることはなかったんです。それだけ、仕事が充実していたんだと思います。ただ、前科を隠していることに対しては、常に強い罪悪感を抱き続けていました」

賞罰欄のない履歴書は多く、早大卒シャブ太郎さんのように、前科を明かさずに就職する人たちもいる(カリスタ / PIXTA)

●在職中に2度目の逮捕、社長・取締役の配慮に「感謝しかない」

順調に社会復帰していた早大卒シャブ太郎さんだったが、最初の逮捕から約9年後、なぜか再び覚醒剤に手を出してしまう。理由は「わからない」。しかし、気づけば、かつてのようにやめられなくなり、2度目の逮捕となった。

「保釈された後、すぐに病院に入院し、治療を受けました。保護観察はついたものの、奇跡的に再度の執行猶予付き判決となりました。

現在も朝早く起きて、入院中に受けたプログラムの維持作業に取り組んでいるほか、週に1回、治療と薬物依存脱却プログラムを受けるために病院に通院しています。オンライン自助グループに顔を出すこともあります。

会社には迷惑をかけましたが、社長は『人生初の経験で大変だったね。再発防止に会社としても取り組む』と声をかけてくれたほか、取締役は退職金を出すために、いったん解雇し、即日再雇用することを提案してくれました。ここまでしてくれた会社には、感謝しかありません。

会社に行けなかった期間は、病気で入院・療養中ということにしてもらっていたので、私が逮捕された事実を知っているのは、ごく一部の人たちです。実名報道もされませんでした」

復帰後、幻聴など、覚醒剤を使用したことによる後遺症に悩まされた時期もあったが、会社は負担が少ない部署に異動させるなど、配慮をしてくれたという。自分を受け入れてくれた会社に報いたいーー。そんな思いで、仕事に熱を注いだ。

ブログ『早大卒シャブ太郎の後悔と復活の日々』(2021年6月に現在のブログに移転)を開設したのは、2度目の逮捕から約3年後の2020年6月。

ブログには、薬物をやめられずに苦しんだ過去や、逮捕されたときのことなどを匿名でつづっていた。1度目の逮捕のことを会社に明らかにせず、入社したことも書いていた。

開設後、フォロワーは一気に急増。Twitterも始めた。DMには、薬物をやめられずに悩む人や薬物使用者の家族から相談のメッセージが届くこともあり、自らの体験をもとに、個別に応じるなどしてきた。

●会社に届いた「密告」メール、差出人は不明

そんな早大卒シャブ太郎さんのブログを読んだ何者かが2022年3月30日、会社に2度目の逮捕が「初犯ではない」ことを密告するメールを会社の代表アドレスのほか、複数の会社の送信フォームに送ってきた。

4月下旬に取締役に呼び出され、メールを見せられた早大卒シャブ太郎さんは、驚きのあまり、言葉を失った。

メールには、2度目の逮捕を「初犯と偽っていた」ことに対して、「反省自体が贋物(にせもの)だったと言わざるを得ません」などと非難する言葉が書かれていた。

それだけではない。早大卒シャブ太郎さんが特に許せなかったのは、会社への非難だ。「本来ならば、御社は社員の犯罪を自ら公表し、世間に謝罪し、問題社員に責任をとらせ、事件の再発を防ぐべく具体的な対策を講じるのが筋」「同社は、企業の社会的責任をどのように考えているのでしょうか」など、会社に謝罪を要求し、責任を問う言葉がつづられていた。

さらに、「週刊文春等のメディアにも情報提供しました」との一文も添えられていた。 ​​ 実際に送られてきたメールの一部(早大卒シャブ太郎さん提供)

メールは匿名性の高い「@5ymail.me」を用いたフリーメールアドレスから送信されていた。また、メディア各社に情報提供したとみられる痕跡もあった。

実際に送られてきたメールの一部(早大卒シャブ太郎さん)

Twitterに会社のランチの写真などを載せたことはありますが、それ以外に勤務先の特定につながりそうな情報を書いたことは多くはなかったと思います。ただ、私自身のメディアリテラシーも甘かったと思っています。

会社でも誰が送ったのか調べてもらいましたが、非常に巧妙な送付方法でおこなっているので、IPアドレスがわかりませんでした。

今は弁護士に相談し、情報開示の準備を進めているところです。でも、民事訴訟を起こしても、弁護士費用すらまかなえるかわからない程度の慰謝料しか手に入らないと聞きました。慰謝料を受け取るだけではなく、メールの送り主に卑劣な行為であることを認めさせたかったのですが、資金を準備できず、泣き寝入りするしかないとも思っています」

会社に送られたメールはすべての管理職に共有され、早大卒シャブ太郎さんが覚醒剤を使って有罪判決を受けたことが社内に知れ渡ることとなった。

「反感を抱いた管理職も複数いると聞いていますし、明らかに態度が変わった人もいます。会社からは退職を推奨され、すでに具体的な退職金の話などもされています」

5月11日付のブログでこの出来事について書くと、「会社を訴えるべき」とのコメントも寄せられた。しかし、早大卒シャブ太郎さんは、会社にとどまることは考えていない。

「薬物事件で一番受ける被害は、身体的な健康被害でも刑罰でもなく、社会的スティグマだと痛感しました。

今回の件だけではありません。1度目の事件の執行猶予中に、海外出張に行かなければならず、渡航先や有効期限が限定された特殊なパスポートの入手にも苦労したこともあります。なんとかパスポートは発給されたものの、ほかの人とは違う異常に長い入国手続きのため、職場仲間にジロジロ見られたことを覚えています。

会社にはこれまで十分助けてもらい、感謝しかありません。今後は、前科を明かしたうえで、受け入れてくれる会社を探し、転職しようと考えています」

ブログTwitterについても「自分と同じように、薬物を使わないでほしい。薬物をやめられずに苦しんでいる仲間やその家族の役に立ちたい」という願いから、閉鎖せず、続けていくという。

薬物依存症ブロガー「早大卒シャブ太郎」さん、前科密告されて退職勧奨に…更生阻む「負の烙印」

(出典 news.nicovideo.jp)

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