だが、そのグローブの扱いを巡って今なお“混乱”する教育現場は少なくないようだ。都内の小学校副校長は苦しい胸の内を語る。
私自身、野球は大好きなので子供たちと一緒に野球ができると喜んだのですが、じゃあ、どうやって子供たちに使わせるのかとなると、これがまた難しい。会議では休み時間に学年ごとに貸し出す案や体育の時間に使うなどの意見も出ましたが、『休み時間に校庭でキャッチボールをしたら大谷のグローブを見たい子供たちが殺到して危ないのではないか』、『体育の授業で使うにしてもグローブがない子はそのとき、何をさせたらいいのか?』など、案が出るたびに“危険性”や“不公平”が出てしまいした
そこで解決策が出るまでは校舎の入り口にある賞状や盾をケースに飾り、まずは子供たちに見てもらうことから始めようとなったのだが……。
一旦、問題を棚上げする形で“飾る”という結論になったのですが、それをやった自治体や学校がSNSで炎上していたので、これはちょっと安易に対応したらマズいぞとなったんです。とはいえ、何もせず放置したら保護者達からもいろいろ言われますので、とにかく何とかしなきゃと。他校の先生にも状況や使用について聞いたんですが、やはり同じように頭を悩ませていました」
使用方法を巡って紛糾したことには、さまざまな要因があると、この副校長は指摘する。
「まず、今のコは男子でもキャッチボールをしたことがないコのほうが多いんです。ですから、いきなりグローブをはめてキャッチボールはなかなか難しく、誰か先生が付いて見ていなくちゃいけない。それと場所ですね。都内の校庭はさほど広くはないので、休み時間や放課後に自由にキャッチボールをさせるのはやはり危険なんです」