佐藤健太
2024.04.18
4月1日から預貯金口座のマイナンバー(個人番号)付番がスタートした。国が災害発生の際や相続時の利便性をメリットにあげる制度なのだが、自分の財産が「丸裸」にされると不安視する向きは少なくない。マイナンバーとの紐付けは義務ではないものの、金融機関は口座開設などの際に届け出を伺っている。
経済アナリストの佐藤健太氏は「国から十分に周知されないまま開始され、金融機関からのお知らせにドキッとする人も多い。しっかりと制度を理解した上で口座との紐付け管理を考えるべきだ」と指摘する。
目次
1.相続、災害発生時に便利なのがメリット
2.財産相続時の遺族のとてつもない負担は軽減される、災害時のメリットは言わずもがな
3.マイナンバーカード保有枚数は3月末時点で人口の約74%にあたる9216万枚
4.健康保険証の情報を住民基本台帳と照合した結果、氏名などが一致しないケースは約140万件…相次ぐトラブル
5.新紙幣発行で50兆円のタンス預金があぶりだされる
(略)
新紙幣発行で50兆円のタンス預金があぶりだされる
ただ、デジタル庁はマイナンバー制度で副業が判明するものではないとしている。住民税の税額は特別徴収額の決定通知書に前年の給与収入合計額が記載されており、勤務先が把握しようと思えば、現在でも副業の有無を知り得るからだ。
それらの懸念点よりもポイントと言えるのは、今年7月に行われる改刷だ。20年ぶりとなる新しい紙幣の発行が間近に迫っているが、政府の狙いは紙幣の偽造防止とともに、50兆円に上るともいわれる「タンス預金」をあぶり出すことにある。自宅などに眠る紙幣は税務当局が詳細を把握するのが難しいが、金融機関で新紙幣と交換すれば全容がわかる。
マイナンバーとの紐付け管理がなされていれば、いちいち金融機関に照会をかけるまでもなく税務署は容易に金の出入りを把握できるだろう。口座から頻繁に多額のお金が引き出されたり、振込されたりしていれば容易に怪しい動きをキャッチできる。たしかにマイナンバーによる紐付け管理によって相続時の利便性は高まるが、同時に相続する「資産」も細かくチェックされているという点は認識しておかなければならない点だ。
政府は、将来的にマイナンバーカードの全機能をスマホに搭載できるようにしていく方針で、さらなる生活の利便性向上を目指している。ただ、あらゆる個人の情報が紐付けられていけばトラブル発生時の損失が大きくなるのは間違いない。まずは制度をしっかりと自分で理解した上で、どのような情報をいつまでに紐付けるのか検討することをオススメする。