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(各国からバカにされてきた)中国・習近平が西側諸国に抱く「恨み」の正体
ナイジェリアのラゴス出身の英国人である同氏(41歳)は英国立ウォーリック大学卒業後、ウェストミンスターの保守系シンクタンク「ポリシー・エクスチェンジ」のリサーチャー、英誌エコノミスト記者(2007年から5年間)を経て12年にFTに転出した(その間の13~17年には英BBCの報道番組「サンデーポリティクス」のコメンテーターも務めた)。
そして2018年からコラムニストとして米ワシントンに異動、米国政治を専門に執筆した後の22年、ロンドンに戻り今日に至る。世界的に評価が高いジャーナリトだ。
そのガネシュ氏の最新記事を取り上げたい。FT(8月22日付)の「BRICS『恨み』が共通軸―権威に憧れや承認欲求も」(30日付「日経」朝刊掲載の見出し)を興味深く読んだ。ちなみに英文では「Resentment makes the world go round-From Donald Trump to the Brics, a feeling of exclusion from the in-crowd drives political actors」であり原文に即したタイトルだ。
この記事のメインテーマは、8月22~24日に南アフリカの首都ヨハネスブルクで開催されたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)首脳会議である。ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(オンライン)、インドのナレンドラ・モディ首相、中国の習近平国家主席、議長国南アのシリル・ラマポーザ大統領が蝟集した。
来年1月からアルゼンチン、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、エチオピアの6カ国が新たにBRICSに加わるとラマポーザ氏が発表するや、中国語だったかは定かでないが、習氏は立ち上がって「BRICSファミリー!」と喝采を送ったと報じられた。反西側諸国連合の盟主を意識する習氏らしい。
エネルギー源は「恨み」
ガネシュ氏は次のように書いている。《なぜなら、多様なBRICSの国を結びつけている共通点があるとすれば、それは「恨み」だからだ。西側の優位に対する怒り、過去の屈辱に対する鬱憤だ。そして、政治と人生を突き動かす力として、恨みはあまりにも過小評価されている》に続けて《……(核融合が)活用可能となった場合に宇宙で最も強力なエネルギー源があるとすれば、それは人間の恨みだと筆者は考える》とある。
前者の「恨み」の英語原文は「grievance」で、後者の「恨み」は「resentment」と使い分けている。ガネシュ氏はこうも書く。《(バカにされてきた)前大統領(トランプ氏)と中国(習氏)はともに、自分は尊敬されるべき対象から認められていないと感じている。西側諸国のエリートはこの感情をなかなか理解できないだろう。自尊心が傷つくようなことはほとんどなかったからだ》。それを同氏は「恨み」(英語表記は「resentment」)であると言い表しているのだ。
この指摘はほとんど文明論の領域である(! )。なぜならば、記事後半にある指摘でそれが分かる。《ロシアのウクライナ侵攻に関する世界的な世論調査から判断すると、世界の大部分は西側のことを傲慢で偽善的だと考えている。一方で、西側は世界の大部分の人が移住したいと思っている場所でもある》。
米中のテクノ覇権競争が先鋭化するなか、中国を訪れたジーナ・レモンド米商務長官は8月29日、予定外の李強首相との会談で「中国の成長を止めて中国とデカップリング(分断)しようとしているわけではない」と述べた。
他方、ジョー・バイデン大統領がインドの首都ニューデリーで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議(9月9~10日)出席の意向を明らかにした直後の同31日、習近平氏の出席見送りをロイター通信が伝えたのだ。そして中国外務省は9月4日、李強首相のG20首脳会議派遣を公式に発表した。むろん、そこには中印紛争の要因がある。それにしても、ここにも「恨み」が影響していることは否めない。
英国を旧宗主国とするアフリカのナイジェリア出身で、その英国で高等教育を受けたガネシュ氏が英国発祥の高級紙FTで国際政治に関する該博な知識を披瀝するのもまた“今どき”らしいと言うべきだろう。
歳川 隆雄(ジャーナリスト)
https://news.yahoo.co.jp/articles/dcff4792ab3c7fd4c369a6d7609804cf17bc3d72?page=1