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【産経新聞】<独自>北朝鮮で元韓国軍兵150人超生存、朝鮮戦争で捕虜・抑留 尹政権解決目指す
【ソウル=桜井紀雄】米国中心の国連軍や中国を交え、民族同士が争った朝鮮戦争(1950~53年)で、
北朝鮮に抑留されたまま生存する元韓国軍兵士が少なくとも約150人に上ることが、韓国の民間団体の分析で判明した。
北朝鮮の捕虜となり、過酷な労働を強いられてきた元韓国軍兵士がいる実態はこれまであまり知られてこなかったが、
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は拉致問題とともに捕虜問題の解決を模索し始めている。
国連軍の推定によると、朝鮮戦争で行方不明となった韓国の将兵は約8万2千人。
だが、北朝鮮側との捕虜交換で帰還できた将兵は8343人にとどまる。
国連は2014年に発表した報告書で少なくとも5万人が北朝鮮に抑留され、約500人が存命していると記した。
元捕虜の帰還を支援してきた韓国の民間団体「ムルマンチョ(勿忘草=わすれなぐさ)」は、
脱出した元捕虜の証言や北朝鮮内部の協力者の情報を総合した結果、
咸鏡北道(ハムギョンブクト)や慈江道(チャガンド)、両江道(リャンガンド)など北部の鉱山地域を中心に少なくとも150人が生存し、
十数人は帰国を望んでいると産経新聞の取材に明らかにした。
大半が90代以上で、約500人とされた存命者の多くは高齢のために死亡したという。
団体の朴宣映(パク・ソニョン)理事長は生存者について「高齢で自力での脱出が難しい」とし、早急な救出支援の必要性を訴えた。
行方不明となった将兵は戦死として処理され、捕虜問題は長年、韓国では関心を持たれてこなかった。
だが、1990年代以降、自力で脱出し帰還する元捕虜が現れ、過酷な抑留生活や多数の生存者の存在を証言し始めた。
韓国に帰還した元捕虜は計80人に上る。
ただ、北朝鮮は「捕虜は存在しない」との立場で、韓国の歴代政権も南北対話の妨げになるとみて捕虜の帰還を北朝鮮に強く要求してこなかった。
だが、尹大統領は昨年5月の就任式に元捕虜3人を招待するなど、
国際社会と連帯して解決を訴えるべき北朝鮮の人権問題として拉致問題や脱北者問題とともに重視する姿勢を打ち出した。
今年3月には韓国政府として初めて北朝鮮人権報告書を公開。
拉致被害者と並んで捕虜問題でも別項目を設け、韓国人捕虜本人だけではなく、
北朝鮮で結婚して生まれた子供ら家族まで厳しい監視と差別の対象となってきた実態が明記された。
北朝鮮は労働力として子孫に至るまで酷使するため、捕虜を強制的に北朝鮮住民に編入していた。
尹政権は北朝鮮問題で日米との協力を目指し、高官協議などで拉致や捕虜問題を含む人権問題での連携を確認してきた。
日本人拉致問題解決を最優先課題とする日本政府と今後、北朝鮮への有効な国際圧力を高められるか注目される。
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朝鮮戦争 1950年6月25日、北朝鮮の韓国への侵攻で始まった国際紛争。米軍主体の国連軍が韓国を支援した。
北朝鮮が当初優勢で、韓国・国連軍は南部、釜山付近に追いつめられるが、仁川上陸で反撃し、中国国境付近まで進軍した。
10月以降、中国人民義勇軍が参戦して北緯38度付近で一進一退が続き、
53年7月27日に国連軍と北朝鮮の朝鮮人民軍、中国人民義勇軍の3者が休戦協定を締結。
韓国は調印を拒否した。死者は民間人合わせて数百万人といわれ、南北分断で1千万人ともいわれる離散家族を生んだ。
2023年7月25日 17時17分
https://news.infoseek.co.jp/article/sankein__world_korea_WI6DQTCMZZMQPBG5WQY4QR4T4E/?tpgnr=world