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まさか!猫かと思ったらロボットだった!
👉固体から液体に変わり、檻からの脱出に成功した金属ロボット
体が固体にも液体にもなるといったらすぐに猫が思い浮かぶが、これは金属製の人型ロボットなので、ターミネーターの「T-1000」に近い存在なのかもしれない。
この液体金属製のロボットは、固体から液体、液体から固体へと高速で変化することができる。実験では檻に閉じ込められたロボットが液状化し、脱出することに成功している。
このロボットは、磁力に反応し、電気を通すことができる。病気の治療や電子回路の組み立てなど、人間の手の届かないような場所で活躍してくれると期待されている。
その不思議な液体金属ロボットの性能実験は、学術誌『Matter』(2023年1月25日付)に掲載されている。
一般的なロボットのイメージといえば、硬く頑丈なボディだろう。だがそれとは反対に、生物のように柔軟でしなやかに動く、「ソフトロボット」というタイプのロボットもある。
ソフトロボットには、硬いロボットにはないさまざまな長所があるが、柔軟性と引き換えに、頑丈ではないし、動作の制御が難しいという問題がある。
どうにか両者のいいとこ取りはできないのか?
カーネギーメロン大学の潘程楓(パン・チェンフォン)氏は、「ロボットに液体から固体へと変身する力を与えれば、より多くの機能を発揮させることができます」と考えた。
[もっと知りたい!→]ターミネーターのT-1000からインスピレーションを受けた液体金属ロボットが開発中(中国)
Image Credit: Wang and Pan et al/Matter CC-By-SA
磁気に反応して金属が過熱され個体から液体へと変化
そこで彼らは海に生息する「ナマコ」に着目した。ナマコは体の組織を柔軟に変化させることで、怪我を回避することができる。
この特性をロボットで再現する為、「磁気活性固体・液体相転移物質」と名付けられた相変化材料を開発した。
相変化材料は、温度により液相(液体)と固相(固体)に変化する性質を持った材料のことである。
今回開発された素材は、融点が29.8度と非常に低いガリウム金属に磁性粒子を埋め込んだものだ。
この磁性粒子には2つの役割がある。
1つは、磁気(交番磁場)に反応して、HIヒーターのように金属を加熱すること。これによって、金属を固体から液体へと相変化させる。そしてもう1つは、磁気でロボットをコントロールして動かすことだ。
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これまでの相変化材料はヒートガンや電流といった外部の熱源を利用して固体から液体へと変化したが、新しい相変化材料は内部から発熱するというアプローチが採用されている。
また粘性が低く、滑らかな流動性を実現できたところも新しいという。
Image Credit: Wang and Pan et al/Matter CC-By-SA
ロボットを檻から脱出させることに成功
研究チームは、新しい相変化材料で作ったロボットの性能を試すため、さまざまな実験を行なっている。
動画では、人型のロボットが固体から液化し、檻から脱獄するなど、猫とか、T-1000を彷彿とさせる芸当を披露した。
Watch this person-shaped robot liquify and escape jail, all with the power of magnets
他にも、堀をジャンプで越えたり、壁を登ることもできる。真っ二つに分裂しては、協力しながら物体を動かし、再び合体するなんてこともできる。
Image Credit: Wang and Pan et al/Matter CC-By-SA
医療や製造への応用
こうした能力を活かせば、実用的な分野でも活躍できると期待されている。
「現在、この材料システムを実用的に使って、医療や工学の問題を解決しようとしています」と潘氏は語る。
例えば、研究チームが試してみたように、このロボットで胃から異物を取り除いたり、薬を投与したりといった使い方があるだろう。
ほかにも手が届かないところにしみ込み、はんだと導体の二役をこなしながら電子回路を組み立てる”スマートはんだ”や、ねじ穴の中で固まることでドライバーなしで固定する”万能ねじ”として活躍できる。
ただし今回の研究は、あくまで概念実証のためのデモでしかない。人体内での安全性を検証するなど、実用化までにはまだまだ研究が必要であるとのことだ。
References:Watch this person-shaped robot liquify and es | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo