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【密約が存在?】台湾有事になぜか「自動的」に参戦させられる自衛隊
アメリカ有数の安全保障に関するシンクタンクである「CSIS」(戦略国際問題研究所)が中国による台湾侵攻に関するレポート“The First Battle of the Next War: Wargaming a Chinese Invasion of Taiwan”を公開した。
このレポートにおいては、たとえ米軍と自衛隊の支援によって中国軍が台湾占領という目的を達成できない場合でも、台湾軍はもとより米軍と自衛隊も極めて大きな犠牲を強いられる結果となっている。
質的損害は日米のほうが深刻
このレポートは、中国軍の台湾侵攻を想定したウォーゲーム(注)の結果をまとめたものである。
(注)ウォーゲーム:図上演習、軍事シミュレーション。厳密にはウォーゲームとシミュレーションは若干の相違点がある。日本では娯楽目的のウォーゲームが普及しているため、以下「シミュレーション」と称す。
ー中略ー
CSISは日本の政治家などとも人脈を持っており、日本のメディアもあたかもアメリカを代表するシンクタンクのように認識しているせいか、今回のCSISレポートは日本でも注目されている。とりわけ、上記のように日米両軍の艦艇・航空機の損失が甚大であるため、それらの数字が取り上げられているようである。
しかしながら日本において取り上げられるべき問題点はシミュレーションの対戦内容や損害規模ではなく、CSISのシミュレーションをはじめとするアメリカにおける台湾有事シミュレーションが大前提にしている「与件」に関してである。
例えば、上記CSISのレポート内において、「台湾は徹底抗戦し絶対に降伏してはいけない」ことを、全ての条件に先立つ大前提としていることを明示している(レポートの3ページ目)。この大前提からは当然のこととなるが、同箇所で「もし米軍が投入される以前に台湾が降伏してしまったならば、以後(この種のシミュレーション)は全く無駄である」と注記している。この「与件」については次の機会に詳述したいが、それ以上に日本にとって問題なのは、アメリカにおける大半のシミュレーション実施者たちが「あまりにも当然であるがために、(上記のように)大前提にしたことを述べることすらしていない」大前提のそのまた大前提たる「与件」である。
すなわち、「台湾問題が引き金となってアメリカが中国と戦端を開くと、日本はアメリカに付き従って参戦する」というシナリオである。
第三国間の軍事衝突に参戦するというのは、一方の陣営に何らかの軍事的支援を提供する場合から、自国軍隊を戦闘に参加させる場合まで、様々なレベルが想定できる。台湾有事での米中軍事衝突に日本が「参戦」する態様も、自衛隊による支援活動は差し控えるが在日米軍基地からの出動や補給を容認するといった場合から、自衛隊を戦闘に投入する場合まで想定可能だ。
しかしながらCSISのシミュレーションをはじめとする様々な台湾有事シミュレーションでは、アメリカ軍が日本国内の米軍施設から出撃したり補給拠点に用いることを日本政府が容認することは「空気の存在」のように自然な状態とされている。さらに、タイミングはまちまちであるが、自衛隊が海軍戦力や航空戦力を投入する事態も当然視されているのだ。
「日本の参戦」を与件とするのが常識
・米中が軍事衝突開始
→日本は米軍による日本国内の軍事拠点を使用することを認める(与件)
→中国軍が日本国内の米軍出撃・補給拠点を攻撃する
→日本政府は「反撃」のために台湾・アメリカ側に立って自衛隊を投入する
(略)
2023.1.19(木)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73553