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「日本で積み上げたことが無になる」 安易なMLB挑戦に福留孝介氏が鳴らす警鐘
引用元: https://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1672980463/
ただ「行きたい」だけで米球界へ行くと「損をすることになる」
日米あわせて24年のプロ生活のうち、5年を米国で過ごした福留孝介氏は、その時間を「いい経験になった」「行って良かった」と振り返る。福留氏がカブスに入団した2008年以降も数多くの日本選手が海を渡った。今オフもすでに吉田正尚外野手がレッドソックス、千賀滉大投手がメッツと契約を結び、2023年から米国を主戦場とする。
子どもたちが将来の夢に「メジャー選手」を掲げるようになった今、選択肢の1つとして米国でのプレーに興味を持つ選手は増えるだろう。では、実際に米国へ渡り、メジャーでもマイナーでもプレーした経験を持つ福留氏は、米国行きを希望する選手にどんなアドバイスを送るのだろうか。福留氏の米国期にスポットを当てた連載の最終回は「覚悟の話」だ。
「自分はFAになって、年齢的にも最後のチャンスだと思ったから『よし挑戦しよう』って行ったけど、だからって『僕、アメリカに行きたいんですよね』っていう選手全員に『おう、頑張ってこいよ』って簡単に言えるかといったら、う~ん……って思う」
少し困った表情を浮かべながら、言葉を繋いだ。
「中途半端な気持ちで行くと、損をすることになると思う。どうしたいのか、先のビジョンを持っていないと、何も得ずに嫌な思いだけして帰ってくることになると思う」
福留氏が移籍した2008年から15年が経ち、より多くの試合中継を楽しめたり、情報が時差なく手に入ったり、メジャーは一層身近な存在となってきた。だからこそ、メジャー選手を夢見る子どもたちが増えたのだが、実際には身近になりはしても、誰もが成功するような甘い世界ではない。
「本当にメジャーに行きたいのだったら、そこに行くまでに何をしなければいけないか、行ったら何をしたいのか、その後にどう繋げていきたいのか、ある程度明確なビジョンを持っていないと。ただ『行ってみたい』だけで行っても、せっかく日本で積み上げたことが無になる可能性は高い。行きたい気持ちは分かるけど、行って何をしたいのか、だよね」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f3f0f2d5f0e7b14beef98e451366360bfd329f2e
「決して万人に勧めるわけではない」けれど、メジャーは「舞台として最高」
新たな挑戦に臨もうという時、一歩踏み出す勇気や勢いが大切なカギとなることもあるが、自分の立ち位置を客観的に見る冷静な目が必要になる時もある。
「以前、まだ日本で実績がないような後輩が『メジャーに行きたいんです』って相談しに来た時は、はっきり言いましたよ。『お前が行けるんだったら、全員行けるわ』って(笑)。ボール拾いをしにいくの? という話。自分の立ち位置を少し冷静に見てみるように言いました」
メジャーに挑戦するのであれば、マイナーから這い上がろうという「覚悟」や「熱意」が必要だとも話す。
「田澤(純一)はアマチュアから直接アメリカに行って、すごく頑張って成功した。最初の頃はマイナーで苦労して、そこから自分で掴み取ったわけじゃないですか。田澤の後にもアマチュアから直接行った選手たちはいるけど、今では名前も聞かなくなってしまった。やっぱり簡単なことじゃないんですよ。斎藤隆さんだってそう。最初はドジャースとマイナー契約を結んで、そこから這い上がって。アメリカで成功したいと覚悟を決めていたから、あの成功が掴めたわけでしょ。いきなりメジャー契約で行った僕らより何十倍、何百倍という苦労や努力をして、メジャーの舞台に立ったんだと思う」
「決して万人に勧めるわけではない」と率直に言えるのも、米球界の厳しさを実際に肌で感じた経験を持つからだ。同時に、厳しさを乗り越えた先にある喜びも知るだけに、味わわせたい思いもある。
「僕は最初、マイナー契約で行く選手は、なんでそこまでしてアメリカに行きたいんだろうって思っていたくらい。でも、実際に行ってみて、その気持ちが分かった。どんな苦労をしてでも、このメジャーの舞台に立ちたいって心の底から思ったんだなって。舞台としては最高ですよ、メジャーの舞台は。でもだからこそ、安易に『じゃ、頑張ってこいよ』とは、俺は言わないね」
喜びも苦労も知る人の正直なアドバイスほど、心に響くものはないかもしれない。
佐藤直子 / Naoko Sato