あわせて読みたい
伊藤博文を暗殺した「安重根熱風」が吹き荒れる2023年の韓国映画市場 日本にとっては非常に迷惑な話
日本の初代内閣総理大臣の伊藤博文は、1909年10月26日に中華人民共和国・黒龍江(こくりゅうこう)省・哈爾濱(ハルビン)市にあるハルビン駅で、大韓帝国の運動家である安重根(アン・ジュングン)に暗殺された。伊藤博文がハルビンを訪れたのは、ロシア蔵相ウラジーミル・ココツェフと満州・朝鮮問題について非公式に話し合うためだったという。
暗殺に関しては安重根単独説の他にも、伊藤博文が着用していたコートの弾痕から併合強硬派による謀殺だったのではないかという説や、遺体に埋まっていた弾丸がフランス騎馬隊カービン銃(歩兵用小銃より銃身が短い騎兵用小銃)用であったことから、フランスの仕業ではないかという説もある。暗殺から113年が経った今でも真相は謎に包まれたままだ。
だが、一般的には安重根が殺したとされている。だから、日本で安重根と言えばテロリストという認識だ。だが、国を韓国に移せば、彼は民族運動の義士であり、ヒーローであり、現代の韓国人にとっては神のような存在の人物である。
そんなテロリストであり、ヒーローでもある安重根が、2023年は韓国の映画市場で大暴れしそうだ。彼を主人公にした映画が立て続けに公開予定なのだ。
まず封切りされるのは、2022年12月21日の「英雄」だ。これは安重根の生と死を中心に描いたミュージカル映画となっている。
(略)
2022年11月20日には日本でも人気の韓国人俳優、ヒョンビンが安重根役を演じる「ハルビン」がクランクインした。公開日はまだ未定だが、早ければ2023年中に公開される予定だという。
安重根が伊藤博文を暗殺したのが10月26日だから、この日の公開を目指しているのではないだろうか。先にご紹介した「英雄」は、10月26日に公開日が発表されたくらいだ。
(略)
韓国では「英雄」「ハルビン」の他に、日本で起った1923年の関東大虐殺100周忌を記念して、「安重根特集ドキュメンタリー『召喚』、1923年9月関東」も制作される予定だそうだ。それほど“安重根”という素材は国民ウケが良いのだろう。
最初にご紹介した「英雄」は大人気ミュージカルが原作である。2009年から公演が開始され、2022年12月21日からは9演目が予定されている。過去にはニューヨークとハルビンで海外講演も行われたほどだ。
ついでにご紹介しておくと、金薫(キム・フン)という作家が書いた長編小説『ハルビン』は今ベストセラーにランキングされている。これは、映画化された影響もあるが、2022年5月に大統領職を退任した文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が推薦した影響が大きい。
小説の中に、「伊藤は死んだのか。伊藤が死んだら、私の命が伊藤の命の中に入って刺さったのだ」という有名なくだりがある。このセリフは多くの韓国人読者の心を震わせたそうだ。
冒頭でご紹介したが、伊藤博文は誰の手によって暗殺されたのかはっきりと分かっていない。それにもかかわらず、韓国では安重根が伊藤博文を暗殺したと決めつけ、彼を英雄視し、彼を美化する映画やミュージカルを国内外に流している。
韓国のエンターテインメント界はこのようなアピールが上手い。だから、フィクション映画を史実だと勘違いする人が増えてくる。日本にとっては非常に迷惑な話である。(羽田真代)