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朝日新聞、喧嘩両成敗の論法を展開 「日本政府にも改めるべき点がある」「日韓の合意で慰安婦問題への言及を禁じたわけではない」
■徴用工訴訟や慰安婦問題の具体的な解決策には全く触れず
3月1日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、日本の植民地支配に抵抗した1919年の「3・1独立運動」を記念する式典で演説した。
文在寅氏は今年1月の新年記者会見で、徴用工訴訟について「日本企業の資産が強制執行で現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくない」と現金化回避の意向を示し、慰安婦問題についても「日韓合意を公式的なものだったと認める」との考えを述べていた。
いずれもこれまでの姿勢や態度を変えるもので、記念式典での演説が注目されていた。しかし、日韓関係の改善を抽象的に語るだけで、徴用工訴訟や慰安婦問題の具体的な解決策には全く触れなかった。
態度を変えた文在寅氏の腹中には、間違いなくいくつもの打算がある。1月23日付の記事「『日本の資産売却は避けたい』突然態度を翻した文在寅大統領の本当の狙い」でも触れたが、あらためて考えてみたい。
■「韓国は対話に応じるから日本もその意思を示せ」は失礼だ
3月1日の演説内容を具体的に見てみよう。文在寅氏は「韓国と日本の唯一の障害は、過去と未来の問題を切り離せず、未来の発展に支障が出ることだ」と指摘したうえで、「過去の過ちから教訓を得ることは、国際社会で尊重される道だ。韓国政府は日本政府と向かい合い、対話をする準備ができている」と日本に対し、関係改善を呼びかけた。
韓国は対話に応じるから日本もその意思を示せ、と求めているのだ。実に失礼な言い方である。徴用工訴訟では解決に向けた行動を何ら起こさず、慰安婦問題では「最終的かつ不可逆的な解決」を約束した日韓合意(2015年)を否定した。
過去と未来の問題を切り離していないのは、いまの韓国政府だ。文在寅氏は日本に対話を呼びかけるのであれば、まずは徴用工訴訟と慰安婦問題での無礼を詫びるべきだろう。
■文在寅氏の大統領任期は来年5月で切れる
しかも文在寅氏は「韓国は被害者中心主義の立場で、解決策を模索していく」とも語った。徴用工訴訟の原告や元慰安婦らの機嫌を取ろうとしている。文在寅氏の大統領任期は来年5月で切れる。それまでに低迷した支持率を元に戻して支持層を固め、そのうえで大統領選に臨み、新たな次期大統領を自分の与党から出し、進歩派(左派)政権を継続したいのだ。これが態度を変えた理由、腹中の打算の1つである。
こんな打算を抱くようでは、日韓関係の改善などほど遠い。新年の記者会見で「日韓合意を公式的なもの」と明言したのだから、2015年の日韓合意を反故にした理由を明確に示すとともに、日本政府に謝罪すべきである。文在寅氏は国家間の約束というものをどう考えているのか。
加藤勝信官房長官は3月1日の記者会見で「重要なことは懸案解決のため韓国が責任を持って具体的に対応していくことだ」と話し、韓国に解決策を提示するよう求めた。日本が納得できる解決策を、まず韓国側が示す。これが道理である。日韓関係をこじらせたのは、文在寅政権だからだ。
■南北改善のために東京五輪を利用するつもりだ
3月1日の演説で文在寅氏は東京五輪にも触れ、「オリンピックは韓日、南北、日朝、朝米の絶好の対話の機会になる。成功させるために協力する」と述べた。
南北関係の改善を政権の重要課題と考えている文在寅氏は、東京五輪に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記(今年1月の党大会で委員長から総書記に格上げ)を招き、アメリカと北朝鮮の対話の舞台にしようと画策している。実際、文在寅氏は開会式に各国の首脳クラスの人物を集めて朝鮮半島問題を話し合ったり、北朝鮮の核・ミサイル開発や日本人拉致の問題について議論したりする会議の開催を日本など関係各国に水面下で求めている。
朝鮮半島の南北改善のために東京五輪を利用する。これが文在寅氏の2つ目の打算である。今回の演説では「対話の機会」との表現にとどめたが、今後、文在寅氏は徴用工訴訟と慰安婦問題を解決する代わりに、東京五輪を米朝対話や南北改善の舞台に使うことを日本に求めてくるはずだ。だが、オリンピックに政治的打算を持ち込むことは許されない。
そもそも沙鴎一歩がこれまでも主張してきたように、国際社会に反旗を翻し、日本を侮辱する北朝鮮の金正恩氏を、東京五輪に招待するべきではない。
(略)
ヤフーニュース(PRESIDENT)
https://news.yahoo.co.jp/articles/86e69cdbda80ca02e2df3951b3708f942707b685