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【国際】ウクライナが得た大量の対戦車ミサイル、ロシアに戦術変更迫る可能性
一部の軍事アナリストは、過去数週間でウクライナに送り込まれた最新式対戦車ミサイルの量は驚異的であり、近代の主要戦争では前例のない規模をウクライナ軍が手にした可能性があると指摘する。
英国は次世代軽対戦車(NLAW)ミサイル3615基をウクライナに送ったと発表。ドイツは1000基、ノルウェーは2000基、スウェーデンは5000基の対戦車兵器をそれぞれ供与する。米国は数量こそ公表していないが、携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」をウクライナに提供する。他の国も同様の兵器を送っており、その多くは最新技術ではないものの、ロシア軍にとっては相当な脅威となる。
プーチン大統領が始めた侵攻はウクライナ側の抵抗とロシアの誤算により、当初の想定通りには進んでいない。最新鋭の対戦車兵器もロシア軍を阻む要因の一つだ。
米シンクタンク、ジェームズタウン財団でロシア軍を専門とするパベル・フェルゲンハウアー氏(モスクワ在勤)によれば、最新式のロシア戦車でさえジャベリンには弱いことが明らかになっている。ジャベリンもNLAWも戦車の装甲が最も弱い上方から攻撃するタイプで、ミサイル自体が標的を追尾する能力を持つ。発射したらすぐにその場を離れることが可能であるため、敵に位置を知られずに済み、反撃されるリスクを減らすことができる。
ソーシャルメディア上で広く共有された動画では、キエフ近郊のブロバルイに進入しようとしたロシア軍の戦車や装甲車の車列が攻撃を受けて退却する様子が映し出されていた。
フェルゲンハウアー氏は「都市部の制圧に際しては、爆撃するだけなく、防御側がショックを受けている間に歩兵が進入することが重要」であり、それが不可能なら目標は達成できないと指摘する。
ロンドン大学キングス・カレッジ戦争学部のローレンス・フリードマン名誉教授は最近のブログで、「主要都市への本格的な進軍がないのは注目に値する。ロシア軍上層部は、ウクライナ側が入念に準備してきた市街戦に及び腰な部隊を無理に送り込むことを懸念しているのかもしれない」と分析。それが事実であれば、交渉による解決の可能性は高くなるとの見方を示した。
しかし、停戦が実現しない限り、ウクライナがロシアの戦車による都市部進攻を防げたとしても、それによってさらに戦争は長期的かつ残酷な展開となる恐れもある。
フェルゲンハウアー氏によると、現在ウクライナにいるロシア軍司令官のほぼ全員がシリアでの戦争経験を持つ。当時、ロシア軍はアレッポなどの都市を空爆したが、シリア政府軍が追撃に失敗し、泥沼の包囲戦が2年にわたって繰り広げられることになった。
ソース ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-15/R8SGLUT0G1L101
キエフ近郊のイルピンでロシア軍車両への攻撃に使われたNLAWを手にするウクライナ兵(12日) Photographer: Sergei Supinsky/Getty Images