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【中国】「皇帝の顔色」の変化で庶民も実感し始めた中国のバブル崩壊 今は誰もがバブル崩壊を確信している
この夏に中国人の経済や国の将来に対する見方が大きく変わった。富裕層から庶民まで多くの人々が、バブルが崩壊したと思うようになった。今年(2024年)の春頃までは、バブル崩壊と言われてもそれを西側が流す陰謀論として信じない人も多かったのだが、今は誰もがバブル崩壊を確信している。
なにがこの変化をもたらしたのだろうか。原因は複合的であり、多くの事象が重なって先行きに対する自信が失われたものと思われる。
動静不明になった習近平
ここである中国人から興味深い話を聞いた。それは人々の将来に対する見方が習近平の健康問題に関連しているとする説だ。秦の始皇帝以来、中国は皇帝が統治する国である。人々は意識してはいないのだけれど、心のどこかで皇帝の顔色を見ている。それが中国という国の国柄である。
8月初旬、北戴河会議が開催された頃、習近平の動静が不明になった。それに対して、海外で反中国的な活動を行っている人々から、ネットを通じて習近平が脳卒中で倒れたとの情報がまことしやかに流れた。そんな習近平は8月19日にハノイを訪問したベトナムのトー・ラム新書記長と予定通り会談を行い、健康不安説を払拭した。
しかし中国のある情報筋の話によると、火のないところに煙は立たなかったようなのだ。8月初旬に習近平の体調になんらの変化があったことは確かとされる。その情報筋は、おそらくは軽い心臓発作ではなかったかと見ている。習近平は体が大きく体重は100kgとされる。また酒を好み、一晩に茅台(マオタイ)酒を一瓶空けてしまうほどだ。そんな70歳を過ぎた老人が、ストレスで軽い心臓発作を起こしたとしても不思議ではない。
ストレスの原因は北戴河会議にあったと思われる。北戴河で習近平が長老たちから叱責されたとの情報も出ていたが、それはガセネタであろう。現在、習近平に楯突くことができる長老など一人もいない。長老たちは和やかに習近平に接したはずだ。それでもちょっとした言動から、習近平は長老たちが自分を非難していることを察したようだ。独裁者はいつも孤独である。彼の耳には都合のよい情報しか上がってこない。そんな彼には、長老たちのちょっとした皮肉もショックだったに違いない。
三中全会の決議が明らかにしたように、中国にはバブル崩壊を止める手段がない。日本をはじめとした西側のエコノミストたちは中国政府に金融緩和と大胆な財政出動を勧めているが、膨れ上がったバブルがあまりに巨大であるために、少々の財政出動では不動産バブルの崩壊を食い止めることができない。エコノミストたちは実態を知らずに、無責任なことを言っているに過ぎない。簡単にバブル崩壊を食い止めることができるくらいなら、共産党はとっくにそのような措置を講じている。
ここまで膨れ上がったバブルを金融緩和と財政出動によって対処しようとすると、猛烈なインフレになる。元が暴落する。中国共産党の幹部は、蒋介石の国民党政府が内戦を行うために貨幣を乱発し、それによって猛烈なインフレが起こり、誰もが国民党を信任しなくなった歴史を知っている。つまり、ここまで膨らんだ巨大なバブルに対して中国共産党は打つ手がない。
始皇帝以来、皇帝の顔色をうかがって生きてきた中国の民衆は、習近平の顔色の変化を見て、中国が直面している事態が容易ではないことを悟った──。
知人はそれがこの夏に中国人の景況感が大きく変化した原因だと言う。ちょっと穿(うが)ち過ぎとも思うが、今でも多くの人が風水を信じている国であり、あり得る話だと思った。
(略)
中国はこれから長期間にわたってデフレスパイラルに苦しむことになる。次の変化は皇帝である習近平の健康が悪化し、死亡した時に起きる。習近平は現在71歳、その健康は中国共産党が医療技術の限りを尽くして守っている。彼が90歳から100歳まで生きることは十分に考えられる。江沢民は96歳まで生きた。
滅びそうだった清朝は西太后が亡くなるまで滅びなかった。そして西太后が亡くなるとわずか3年で滅びた。毛沢東が死ぬまで文化大革命が続き、亡くなると2年で改革開放路線に転じた。毛沢東がぼけて寝たきりになっていても文革は続いた。中国の歴史は皇帝が作る。この事実を忘れるべきではない。
(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/83223