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【日経】中国と台湾は加盟できる? 知っておきたいTPP
(略)
中国の加盟に3つのハードル
中国の加盟に向けた課題は多い。特に障害となりそうなのがデータを巡るルールだ。TPPはデータ流通の透明性や公平性を確保する原則を定めている。これは既存の多くのFTAが盛り込めなかったもので、専門家の間では「TPPスタンダード」と呼ばれている。中国は、企業や個人による国境を越えた自由なデータの流通には否定的だ。データ安全法(データセキュリティー法)などで統制を強化する同国は「RCEPレベルが限界だ」との指摘がある。
2つ目は強制労働の撤廃や、団体交渉権の承認など、労働に関するルールだ。ウイグル族への人権侵害が国際世論の反発を招く中で、中国はTPPの加盟交渉で難しい立場に置かれかねない。
3つ目として、国有企業への補助金や政府調達の手法など、中国国内の制度改革が必要なテーマも難しい分野だ。TPPは競争をゆがめるとして国有企業を補助金などで優遇することを禁じる。習近平指導部が進めてきた国有企業の増強を続けるなら、交渉はつまずく。TPPは政府調達でも国内外企業の差別を原則的になくすよう求めるが、中国は安全保障を理由に外資系の排除を進めてきた経緯がある。
また、中国が加盟するには全加盟国の支持が必要だ。マレーシア、シンガポールは加盟申請に歓迎の意向だが、日本・豪州は慎重な姿勢を見せている。メキシコもTPPは「高い基準を順守するすべての国に門戸は開かれている」と指摘。国有企業への補助などの中国の経済ルールが加盟に課題となることを暗に示唆した。
台湾の加盟申請に中国「断固反対」
台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、2016年の就任時からTPP加盟を悲願としてきた。台湾経済は中国に大きく依存し、輸出は4割強を占める。統一圧力を強める中国からの脱却を急ぐには、TPPに加盟し中国への依存度を引き下げる必要があると判断した。その中国に加盟申請で大きく遅れれば、加盟が困難になるとみて申請手続きを急いだ。
台湾悲願の加盟にも難題がある。中国大陸と台湾は1つの国に属するという「一つの中国」を唱える中国の圧力だ。中国は自身がTPPに加盟できなくても、台湾加盟を阻止するために、加盟国に対する働きかけを強める可能性が高い。TPP加盟国には、中国と強い貿易関係で結ばれる南米のチリやペルーや東南アジアの国々が多く含まれている。
中国外務省の趙立堅副報道局長は23日の記者会見で、台湾のTPPへの加盟申請に強く反発した。「台湾がいかなる公的な性質を帯びた協定や組織に参加することにも断固反対する」と述べた。米国がTPPから離脱した現在、中国の圧力を受けながら台湾の加盟を強力に後押しできる国は乏しいのが実情だ。
日本との関係でも課題がある。台湾は福島県など5県の農産品の輸入を全面禁止にしてきた。今でも5県産の農産品の輸入に対する市民の反対が根強い。TPPへの加盟のために輸入解禁を強行すれば、反対運動が起こって蔡英文政権運営を揺るがしかねない事情がある。
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA172EY0X10C21A9000000/