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ゴールドコーストではオーストラリアがバーレーン相手に星を落とし、ソウルでは韓国がパレスチナと引き分けた。どんなチームにとっても、初戦というのは簡単なものではない。その難しい初戦を、それも勝つ気はゼロ、ただ亀になっているだけの相手を、木っ端みじんに粉砕した。まったくもって、見事というしかない圧勝劇だった。
アジアでの戦いで日本が圧勝すると、必ずといっていいほど言われてきたのは「相手が弱すぎたから評価できない」ということだった。確かに中国は弱かった。ただ弱かっただけではなく、弱点を補おうとする闘志すらなかった。わたしが中国人であれば、試合途中で怒り、あるいは情けなさのあまりに失神してしまったかもしれない。仮にも一度はW杯本大会に出場したことのある国で、こんなにも卑屈で臆病な戦いをした国があるだろうか。
ただ、仮に彼らが勇敢な戦いを選択していたとしても、結果に大差はなかっただろう。正直、ちょっと唖然(あぜん)とするぐらい、両者の実力差は歴然としていた。この試合に向けた準備の期間では圧倒的に中国の方が長かったようだが、何の意味も、効果も感じられなかった。
中国を率いたイバンコビッチ監督が有能な指揮官であることを、我々日本人は3年前に思い知らされている。だが、そんな指揮官をもってしても、今回ばかりは如何(いかん)ともしがたかった。当然である。彼は、チームをつくり始めたばかり、一方の日本は、森保体制になって6年目のチーム。積み重ねてきたものの多寡が、まるで違ったからだ。
3年前、日本と戦ったオマーンの選手は勇敢だった。だが、四半世紀も日本に勝ったことがない中国の選手たちは、勇気が武器になるということ自体を知らなかった。いくら指揮官が笛を吹いたところで、選手が踊ってくれなければどうしようもない。
翻って、オマーン戦の悪夢を知る日本の選手は、監督は、ちょっとした気の緩みがどんな結果を生むか、身に沁(し)みて理解していた。おそらく、選手たちは試合が始まってすぐに相手との実力差を実感したはずだが、最後まで一定レベルでの攻守のバランスを保ち続けた。7―0というスコアからは信じられないぐらい、日本の戦いぶりは慎重だった。
この勝利によって、アジア杯敗退によって大きく揺らいだ選手たちの自信は、ほぼ回復したことだろう。三笘、南野、久保といった警戒されていた選手がそれでもゴールを奪い、何より、これまではてこずることの多かったどん引きの相手を粉砕することもできた。サイドから斜めに入れるパスの有効性を実感できたことは、今後の戦いを考えた上でも大きい。