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現代サッカーは、SNSでは「移籍専門記者」がインフルエンサーになるような時代だ。有望株の情報は、光の速さで関係者や各国クラブへと集積される。世間的にはまだ知られていない逸材についても、世界が先に“調査完了”している場合がある。
女子においても、谷川萌々子が2020年代のサッカー界を象徴する1人になるのかもしれない。
「加入するのが夢というか、凄くビッグなチームの印象でした」
今夏、日本代表DF伊藤洋輝が加入したことで話題になったバイエルンだが――その半年前にバイエルンの女子チームと契約を結んだのが谷川だった。
クラブ公式のYouTubeでは、契約時の谷川が笑顔を浮かべる様子が収められるとともに、テクニカルディレクターのフランシスコ・デ・サ・ファルディーリャはこんな表現をしている。
〈モモコはこの惑星内で、最高峰のヤングプレーヤーの1人だ〉
2023年女子W杯、2024年パリ五輪でともにベスト8進出を果たしたなでしこジャパンは現在、ヨーロッパ組が数多くなった。女子CL制覇を経験した熊谷紗希(現ローマ)、今季からはマンチェスター・シティに長谷川唯、清水梨紗、藤野あおば、山下杏也加と4人もの日本人選手が所属する。
そのほかにも長野風花や宮澤ひなた、浜野まいか、植木理子らのイングランド勢、そして田中美南や南萌華に移籍が決まった北川ひかる……と数多くの選手が欧米各国を主戦場にしている。
ただ、彼女たちと谷川で大きな違いがあるとしたら――国内リーグで知られた存在になってから、なでしこジャパンに招集されたかどうかである。
年代が上がるにつれて、プレーの幅が広がりました
谷川が在籍したJFAアカデミー福島は、なでしこリーグ2部のカテゴリにいた。その中で谷川は21~23年に、51試合19得点の成績を残している。コロナ禍や2部リーグということもあって、実際に谷川のプレーを目にした人は少ないだろう。
ただ、その3年間は谷川の実力を着実に育んでいた。
「年代が上がるにつれて、やれるプレーの幅が広がってきて、徐々に手ごたえは得ていきました。大人の方と試合することでフィジカルもつけられるなど本当にいい経験をしましたし。ただもっとゲームをコントロールできる選手になる必要があるかなとも課題を感じてはいましたが」
本人は当時をこう振り返っている。
さらには谷川は前述した通り、高校卒業後即ヨーロッパへと渡り、パリ五輪前になでしこジャパンで積み重ねた5試合の出場機会はすべて海外遠征だった。それだけに“事実上のお披露目”となったブラジル戦で見せた衝撃のパフォーマンスは、より増幅して映ったのだろう。