あわせて読みたい
ウクライナはクルスク電撃侵攻をどのように成功させたのか 電子電撃戦、ドローン電撃戦、突かれた脆弱性… 現代戦の最前線
不意をつかれたのは西側のアナリストたちも同じだ。
ウクライナはこの攻勢で、ロシアが数カ月かけて獲得している領域よりも広い領域を数日で手中に収めた。
何が起こっているのかを正確に説明するのは難しいが、成功はウクライナ軍が体得した新しい戦法で達成されたようだ。
■第1部:電子電撃戦
ロシアのテレグラムチャンネル「トロイカ」によると、ウクライナ軍は今回、以前に北東部のハルキウ州方面でより小規模なかたちで試していた戦術を用いた。
これについてはOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのRoyが取り上げている。
ウクライナ軍はまず、ロシア側の監視網を張っている航空機型偵察ドローン(無人機)を撃墜し、ロシアの指揮官の目をくらました。
撃墜には、防空レーダーと連携した最新兵器である迎撃FPV(一人称視点)ドローンが使用された可能性がある。
ロシア側の監視網を一時的に遮断すると、ウクライナ軍は次に短距離のジャマー(電波妨害装置)を前線に持ち込んだ。
ジャマーには電子戦(EW)による偵察活動で収集したデータがプログラムされていた。
アナリストのWarTranslatedが紹介しているところによると、あるロシア人ブロガーは「(ウクライナ軍は)国境無線通信網で使われている主要周波数と
ドローン制御用の周波数を特定し、わが方の通信を“クラッシュ”させる強力なジャマーを用意した」と報告している。
ウクライナ軍がこれらの周波数を割り出せたのは、ロシア側がこの方面に高い優先順位を与えておらず、最新の機材を配備していなかったことが一因だろう。
ウクライナの前線では、ジャミングされた周波数を回避するたびに新しいジャマーで対抗されるというふうに、ドローンとジャマーの戦いは
絶え間ない更新が求められる軍拡競争の様相を呈している。この方面のロシア側ドローンは最新のジャマー対策がとられていなかったようだ。
その結果、目標の探知・識別や、大砲やFPVドローンの誘導に不可欠なドローンが機能しなくなった。
WarTranslatedが引いているロシア人ブロガーによれば、ランセット徘徊弾薬(自爆ドローン)も深刻な影響を受けたとされる。
■ドローンの大群が空を埋め尽くした
ドローンはウクライナの戦場で、機甲攻撃を阻止するための主要な兵器にもなっている。
最近の報道によれば、ウクライナ軍によるロシア軍戦車の撃破の3分の2超はドローンによるものになっている。
ロシア軍の装甲車両がウクライナ側の陣地に到達するはるか手前で、FPVドローンによって次々に撃破される様子を捉えた動画もある。
ウクライナ軍はクルスク方面にジャミングリソースを集中させてロシア軍のドローンを無力化し、自軍の機甲部隊が開けた土地を撃破されずに突き抜けられるようにした。
とはいえ、2年かそこらかけて築かれた防衛線に深く身を隠したロシア側部隊に、ウクライナ軍部隊はどのように対処したのだろうか?
■第2部:ドローン電撃戦
トロイカによると、ウクライナ軍は「大群で飛来する高精度FPVドローンの弾幕」で空を埋め尽くした。
アナリストのRoyは、ウクライナ軍がこのところ、ドローンの強力な爆弾で掩蓋(えんがい)や塹壕、地下掩蔽(えんぺい)部を爆撃して開口部をつくり出していることを紹介している。
熟達したドローン操縦士はこうした開口部にFPVドローンを通し、その下にある壕を掃討することができる。
※略
ロシア側の脆弱性を突いてこじ開けた機会
■突かれた脆弱性
ロシアの軍事評論家たちは、ロシア軍に対して国産のVT-40FPVドローンで「空を埋め尽くし」、クルスク侵攻を一掃するよう求めた。
VT-40はロシアの志願兵部隊を前身とするグループ、スドプラトフが、ロシア国防省との契約のもと大量に生産している。
ただ、このドローンをめぐっては、メーカー側による制御信号のアップデートが遅いため、しばらくすると容易にジャミングされるようになるという点が大きな批判を浴びてきた。
今回もまさにそうだったようだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e33cc60da3c2b8d0335ee8128fb580ca3291e298