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【柔道】柔道大国フランスの競技人口は「日本の4倍以上」 国際化したJUDOに募る“不満”…専門家「チャレンジ制度導入を」
転載元: https://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1722908181/
XなどのSNSでは、日本人が考える“柔道”とパリ五輪で行われた“JUDO”があまりにも違いすぎるとの指摘が後を絶たなかった。なぜ柔道はJUDOになってしまったのか。
皮肉なことだが柔道が世界中の人々に支持されていることも原因の一つだ。国際柔道連盟(IJF)の加盟国は200カ国を越える。競技人口に関するデータは諸説が入り乱れているが、全世界では2000万人と推定され、ブラジルが200万人、フランスが56万人、ドイツが15万人、そして日本が12万人というのが定説のようだ。
スポーツ社会学者の溝口紀子氏は、1992年のバルセロナ五輪では女子柔道52キロ級で銀メダルを獲得したことで知られる。溝口氏はフランス柔道ナショナルコーチを務めた経験もあり、柔道とJUDOの違いにも詳しい。
「私たち日本の柔道関係者としては忸怩たる思いもありますが、日本の競技人口はブラジルやフランスに負けています。そのこともあって、柔道のルール改正は完全にヨーロッパが主導権を握っています。それに加え、4年に1回のオリンピックでしか柔道を見ないという日本人が多いことも影響を与えています。柔道のルール改正は頻繁に行われており、私たち専門家でもアップデートが大変なほどです。4年間、一度も柔道の国際試合を見なかった視聴者が、いきなりオリンピックで最新ルールに基づいた柔道を見るわけです。戸惑う人が続出するのも当然だと思います」(同・溝口氏)
専門家の見る組み手争い
誤解もある。例えばXでは「JUDOは組み手争いばかりで違和感が強い。本来の柔道とはあまりに違いすぎる」という指摘が目立つが、これは事実とは異なるという。
「実は日本の古武道だった柔術の時代、組み手は『当身技(あてみわざ)』と言われ、文字通りの殴り合いでした。嘉納治五郎が柔術を柔道に捉え直していく中で、『投技』、『固技』、『当身技』を構成しましたが、殴り合いの部分である『当身技』は危険なので禁止とし、危険でない部分が組み手の原型になりました。組み手争いは柔道の基本と言ってよく、私たち専門家が、パリ五輪での組み手争いを見ても違和感を覚えることはありません」(同・溝口氏)
ひょっとすると中学校や高校の授業で柔道を習った人が多いことも、日本人の“柔道観”に影響を与えているかもしれない。昭和の時代、男子高校生は基本的に柔道か剣道が必修科目だった。
時代は平成となり、2012年からは中学校1年と2年の男女で武道が必修科目。柔道、剣道、弓道、空手などから選択することになった。教育現場での柔道は組み手を組んでから練習を始めることが多い。まして組み手争いを授業の柔道で教えることは基本的にないだろう。
「授業で組手は右組みと左組みがあると習った方も多いでしょう。ところが現在の競技では、相手選手の動きを見ながら、フレキシブルに右や左を選択して組むのが一般的です。とりわけクロスグリップは、右と左を最初から決めない組み手はヨーロッパで生まれた戦法なのですが、日本人選手も対抗するために取り入れ、さらに発展させています。どんどん高度化しているのが今の組み手争いなのです」(同・溝口氏)
世界の基準はジュードーになりつつある