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止まらない中国GDP粉飾のカラクリ 恣意的にかさ上げ!?成長率4%どころか…「噓」を簡単に見破る方法
【お金は知っている】
中国・習近平政権による国内総生産(GDP)粉飾が止まらない。
拙論は、2023年の国内総生産(GDP)は名目で4・6%、実質5・2%だとする中国国家統計局発表(1月17日)について、原データをもとに再計算したうえで、「水増し」だと報じてきた。産経新聞社の支援を受けて運営する英文の海外向け論壇サイト「JAPAN FORWARD」2月2日付では、「GDP偽装を見抜き、脱中国に徹せよ」と題する記事を発信し、23年のGDP成長率はマイナスの可能性が高いことをズバリ指摘した。
日本や米欧の主要経済紙はフォローしないので不審に思っていたら、米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が3月7日付日本語電子版でやっと、「中国のGDP統計、信じてはいけない」と報じた。
国家統計局は4月には今年1~3月期の実質GDPの前年同期比伸び率を5・3%、今月15日には4~6月期を同4・7%だと発表した。統計局は恒例の記者会見を突如取りやめ、オンライン発表で済ませた。
中国の景気停滞がひどいことは、北京の公式統計を鵜呑(うの)みにするメディアでも触れざるをえない。日経新聞電子版17日付北京電解説記事では「中国経済、先行き不安再び」とし、同日付社説では「中国は経済への懸念にきちんと答えよ」と説教調だ。
だが、経済難が目立つのに、実質で5%前後の成長を続けるという大本営発表との落差には触れない。景気の堅調ぶりが目立つ米国の実質成長率は2%前後に過ぎない。同5%前後の成長率で経済不振だと書くなら、公式統計そのものを疑うのが当たり前だ。
そこで、拙論は中国GDP統計の噓を簡単に見破る方法を示そう。グラフはGDPと固定資産投資の伸び率である。固定資産投資こそは丸11年が過ぎた習政権のもとでの経済の主役であり、2020年まではGDPの5割以上、不動産投資が大幅に落ち込んだ23年でも4割を占めていた。
国家統計局統計項目にはGDPとは別に固定資産投資の2通りの項目があり、月次累計原数値とその前年比数値がある。前者の原数値の前年比を計算すれば、それは後者と一致するはずである。グラフが示す通り、22年12月まではその通りだったが、23年初めからは突如激しく乖離(かいり)し始めた。原数値の増減率は大きく落ち込んでいるのに、前期比データだけはプラスを続けている。統計局はこの前期比データをもとにGDPの成長率を算出するので、GDPは5%前後になるというからくりである。平たく言うと、統計局は原データをそっちのけにして、恣意(しい)的に成長率をかさ上げしたとしか思えない。
固定資産投資原データをもとにすれば、成長率は大きく下がる。家計消費も落ち込んでいる。固定資産投資と家計消費を合わせると、GDPシェアは8割以上だ。とすれば、実際の成長率は当局発表の名目4%どころか、ゼロ%前後にまで落ち込んでいてもおかしくないというのが真相なのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a499090e563892599e52aac52d77fa4c27671a06