戸建てに住む相談者は、インターホン(呼び鈴)に録画機能などはついていないため、インターホンを鳴らして逃げる“犯人”を目視で確認しようと悪戦苦闘。その間に精神科へ通うほど体調が悪化したという。
苦しみ続けて3年、ようやく確認できた犯人は近所の中学生だった。体調不良になるなどの被害を被った相談者としては慰謝料請求などを検討しているという。
ピンポンダッシュする側としては軽いイタズラのつもりだったかもしれないが、鳴らされる側としては迷惑以外の何物でもない。法的責任はどうなるのか。寺林智栄弁護士に聞いた。
●原則として「中学生本人が責任負うことに」
──ピンポンダッシュを理由に慰謝料請求や通院費等を請求することは可能でしょうか。
可能です。平穏な生活を送る利益を少なくとも過失により害しているので不法行為(民法709条)が成立し、精神疾患の治療費・通院費等の因果関係のある財産的な損害や精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。
──相手が未成年者でも、本人に直接請求等することは可能でしょうか。
民法712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と定めています。
未成年者に不法行為に基づく損害賠償責任を追及する場合には、その未成年者に「責任能力」が備わっていることが必要とされています。
この責任能力の有無の境界線は、裁判例では、概ね12歳前後になると考えられているので、中学生であれば、責任能力が否定されることは、知的障害や精神障害などの問題がない限り、一般的には考えにくいでしょう。
相手が中学生であれば、原則として直接請求することができます。
ただ、先ほども述べたように、この中学生に知的障害や精神障害などがあり、責任能力が否定されることもありえなくはありません。
──未成年者の責任能力がない場合はどうなるのでしょうか。
その場合は未成年者を監督する法定の義務を負う者が原則的に賠償責任を負うと定められています(民法714条)。
中学生本人に請求できない場合に備えて、予備的に両親等に対しても責任追及しておくとよいのではないでしょうか。