【図解】一目でわかる…「荷主」の立場は法改正でこう変わる
自民党中小企業・小規模事業者政策調査会などが近く政府に対し、法改正を提言する。政府は6月に策定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込む方針で、来年の通常国会での改正を視野に入れている。
荷主と運送事業者では、仕事を発注する荷主の立場が強いことが多いものの、下請法では明確な下請け関係にないとされている。例えば、消費者が家電を買う場合、荷主となる家電量販店は運送事業者を手配して消費者の自宅に有料で商品を配送するが、下請法では、荷主は消費者と運送事業者の取引を「仲介」しているだけで、下請け関係とはみなされない。
企業が取引先の部品メーカーから部品を買う場合も同様だ。荷主となる部品メーカーが運送事業者を手配して企業に部品を届ける取引は、下請法の適用外となる。
政府は、荷主と運送事業者の取引が下請け関係にあるとみなせるように法改正することで、公取委が荷主による買いたたきなどを積極的に取り締まれるようにする。運送事業者がコストの増加分を取引価格に転嫁し、賃上げの原資が確保できる環境を整えることで、物流業界が直面する運転手の人手不足の解消につなげる狙いもある。
中小企業庁の調査によると、コスト増に対する取引価格への転嫁率は、「トラック運送」が24%と主要業種中で最も低かった。人件費やガソリン価格の上昇分について荷主が取引価格への反映を拒む例や、荷主の都合で積み下ろし場所で運転手が待機する「荷待ち時間」の料金支払いを拒む例があるという。
荷主と運送事業者の取引については、悪質なものは独占禁止法の優越的地位の乱用で取り締まることができる。ただ、独禁法で違反行為をやめさせる排除措置命令を出すには年単位の時間がかかり、迅速な法執行に課題がある。