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第3に、中小企業や家計の代弁をしたり、政府を持ち上げたりする企業だ。実際には円安のメリットを受けているのに、それを隠すこともある。本コラムの読者であれば気がついているだろうが、政府は日本最大の円安メリット享受者だが、そこに国民の目が向くと減税要求が出てくるので、マスコミが垂れ流す円安悪者論を許容している。第3のタイプの企業はこうした政府に忖度(そんたく)し迎合するという面もある。このタイプの論者は、自分ではしっかり円安メリットを享受しているのに、あたかも弱者の味方を装いながら、欺瞞(ぎまん)に満ちた意見を述べているのでたちが悪い。
マスコミは、第1のタイプの主張をしばしば取り上げる。というのは金融業界はスポンサーであることが多いからだ。第2のタイプの意見も、話題の経営者であることから、取り上げることが多い。
また、マスコミはしばしば〝弱者〟の側に立とうとして第3の意見も取り上げる。となると、円安悪者論に与(くみ)しがちになる。
さらにマスコミは理解が難解なマクロの話より、分かりやすいミクロの話をしがちなので、ここにも注意すべきだ。
もちろん円安は国全体では国内総生産(GDP)を増加させるのでプラスだ。「近隣窮乏化」という古今東西から言われていることでも分かるが、円安と円高で効果が非対称なのは、円安は輸出関連のエクセレントカンパニーにとって相対的に有利だからだ。特に、政府が円安メリットを大きく受けることを忘れてはいけない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)