都内から車で3時間ほど、栃木県那須町の山林。昼なお暗い茂みを流れる川の近くに、異様な臭いと黒煙が立ち込めたのは4月16日早朝のことだった。
全国紙社会部記者の解説。
「マネキンのようなものが燃えている」
「通報内容は『マネキンのようなものが燃えている』でしたが、地元警察署員が確認すると2体の遺体でした。焼損が酷く、当初は性別も分からなかったが、手を結束バンドで縛られていて、顔は粘着テープでぐるぐる巻きにされていた。栃木県警は死体遺棄事件として捜査本部を設置し、殺人容疑を視野に捜査を進めています」
亡くなったうちの1人は、東京都台東区に本籍を置く宝島龍太郎さん(55)と判明。
「宝島さんは、東京・上野で居酒屋や焼肉店など十数店舗を経営していました。特に御徒町駅に近い一角は系列店だらけで、近隣から『宝島ロード』と呼ばれていた」(近隣店舗のスタッフ)
ただ、こんな声も。
「宝島さんはいつも、会社の取締役にあたる奥さんと2人並んで自転車で経営店舗を回っていました。売り上げ金を回収していたんですが、売り上げが悪かったり、店に客がいなかったりすると、店長や従業員に対して奥さんがものすごい勢いで怒鳴りつけていました。中国語だったと思います。店員はみんな外国人ばかりでした」(同前)
地元ではやり手の経営者として有名だった宝島夫妻は、近隣店舗との間でトラブルを起こすことも少なくなく、中には、裁判沙汰になることも。
ライバル店に対して「不味いよ」などと…
昨年10月、宝島さんが経営する会社と宝島さんの妻は、近くの飲食店から損害賠償請求訴訟を起こされている。訴状によると、原告の主張はこうだ。
宝島さんの妻が近くのライバル店の看板を勝手に移動させたり蹴ったりしたほか、ライバル店に入ろうとした客に「不味いよ」「こっちの店のほうがいいよ」などと囁いたり、ライバル店で働く従業員に向かって「バカ」「アホ」「痴漢」と罵声を浴びせ、耐えかねた従業員を退職に追い込んだ、というのである。
この訴えに対して宝島さんサイドは、
「原告側が故意に、境界線をはみ出して看板を設置したから元に戻すために移動させた」
「万が一発言していたとしても、以前から、原告側の従業員が被告側の店に入店しようとする客に対して『その店で出しているのはゴミですよ』『皿洗ってないですよ』等の悪評を発言することが多々あり、それに対抗すべく行ったものに過ぎない」
などと反論。さらに裁判記録によると、オープン当初から「原告は被告らを敵対視していた」と主張するなど、近隣との深い溝をうかがわせていた。
さらにこの裁判を機に、この2店舗の関係は単なるライバル関係を大きく逸脱して泥沼にはまっていく。この訴訟が提起された後、宝島さんサイドは、ライバル店のオーナーらを被告とする損害賠償請求事件を立て続けに3件も起こし反撃に出ていたのである。
出頭した20代の男性は「トラブルがあった」
例えば、昨年11月に宝島さんらが起こした裁判の内容は、同年3月の夜に当事者間で起きた暴行沙汰について、さかのぼって損害賠償請求するものだった。
訴状によると宝島さんサイドの主張は概ねこうだ。
「店舗間のトラブルについて協議するため、相手側の店でオーナーを待っていたところ、オーナーが到着するなり突如、顔面や後頭部、首等を一方的に複数回にわたって殴る等の暴行に及んだ」
それに対してライバル店側は、
「原告(宝島さんの妻)が、自ら営業妨害行為を行ってきた立場であるにもかかわらず謝罪をするどころか被告の腹部を傘で力強く突き刺すといった暴行を行い、中国語や韓国語で、『おろか者』『浮気者』『馬鹿野郎』『クズ』『犬以下のクズ』『死ね』といった暴言を吐き続けていた」
このトラブルでは実際に警察も対応する騒ぎになったという。
栃木県警は亡くなった宝島さんがこうした摩擦を複数抱えていたことを把握している。また、捜査関係者によると17日に出頭した20代の男性も「飲食店関係で宝島さんとトラブルがあった」という旨の話をしているという。
県警は宝島さんらを巡る周辺状況を慎重に調べている。