「若者世代がつぶれる」
2026年度に始まる「子ども・子育て支援金」制度は、公的医療保険に上乗せして徴収し、児童手当や育児休業給付の拡充などに充てる財源の一つとする仕組み。衆院特別委員会は16日の理事会で、支援金制度の創設を盛り込んだ子ども・子育て支援法などの改正案を18日に採決することを決めた。
支援金は26年度から徴収を始め、負担額は毎年上がって28年度に満額となる。加入する公的医療保険制度、所得などに応じて負担額は異なる。
SNS(ネット交流サービス)では「医療保険の値上がりがなぜ『実質負担ゼロ』なのかわからない」「子育て世代だけど支援金には反対。現役若者世代がつぶれる」など疑問や不安が噴出している。
少子化には「家族制度の規制緩和」を
制度・規制改革学会(代表理事・八代尚宏昭和女子大特命教授)の有志は5日、「子育て支援金制度には根本的な欠陥がある」として撤回を求める緊急声明を出した。
労働経済学が専門の八代氏は毎日新聞の取材に対し、健康保険料に上乗せして徴収する手法について「疾病のリスクに備える社会保険の目的外利用です。これを許してしまえば今後も安易な支出が繰り返される危険性があります」と警鐘を鳴らす。
保険料を上げることは現役世代の負担増にもつながるため、社会保障費の増額は世代を超えて負担する消費税で賄うべきだと指摘。「岸田首相はイメージ悪化を気にしているのかもしれませんが、新たな政策を打ち出したら財源も考えなくてはいけません。保険料への上乗せは国民を欺く『隠蔽(いんぺい)増税』です」と話す。
岸田首相が掲げる少子化対策についても、八代氏は懐疑的だ。児童手当の拡充などでは新たに子どもを持とうという意欲につながりにくく、「ばらまきの人気取り政策」と批判する。
日本の場合は未婚者の増加も少子化の背景にあるとされ、政府は結婚しやすく、共働き世帯が働きやすい環境作りを率先してほしいと訴える。「少子化対策の基本は制度・規制の改革。働き方や別姓選択、事実婚の法的地位など家族制度の規制緩和に取り組むべきです」【宮川佐知子】