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【韓国教授】韓国と日本は良き隣人となり共に勝者になる旅に出よう。時間はあまりない
輸出規制3品目のうち、HSコードによる把握が容易な半導体用フッ化水素の日本からの輸入量の推移を調べてみると、輸出統制改正案が発表された昨年3月には、すでに前年比99.7%にまで急増していた。総輸入に占める日本の割合は、2018年の46%から2021年には6.5%にまで落ちた後、2023年には輸入規制撤回に力づけられ、25.2%に急上昇した。では、日本の勝利だったのだろうか。
そうではない。2023年のフッ化水素の総輸入量は、輸出規制以前の2018年に比べ52%に減少した。韓国が歯を食いしばって推進した国産化の力だ。日本のシェアを持っていった国は、他でもない中国だ。中国のシェアは2018年の48.4%から2021年には73.3%とピークに達し、輸出規制が解除された2023年に64.4%に低下しても、いまだに1位だ。日本が安全保障の不信を理由に、米国の同盟国である韓国に相互依存を武器化した結果が、滑稽なことに中国に漁夫の利を与えることになった。
(略)
では、韓国が勝者なのだろうか。そうではない。韓国がフッ化水素の国産化に成功したといっても、いまだに高純度の製品は日本から買っているため、2019年以降も輸入減少は輸入単価の上昇を招いた。輸入量が最低を記録した2022年の輸入単価は最悪だった。輸出規制撤回の両面性も見逃してはならない。これは、該当品目の国内需要企業にとっては供給先多角化に寄与するが、今まさに国産化に乗りだした企業にはとっては、冷水を浴びせられることになるからだ。
前者と後者が描く悲喜の双曲線を適当に考えてはならない。残りの2品目は、対日依存度に変化がほとんどない状況で、輸出規制の原状復帰が韓国の技術革新を阻害するのではないかと懸念される。したがって、次のような話になる。韓国は2019年以前に戻ってはならない。日本の輸出規制は、その後のコロナの狂風と米中戦略競争の激化に備えた予防注射として位置づけるとき、はじめて日本の輸出規制強化は「偽装された祝福」として迫ってくる。
韓日両国は、いつまで敗者だけを量産しなければならないのか。両国は今なお相互不信の沼でさまよっている。しかし、少し視線の方向を変えてみよう。両国は三重で同病相憐の境遇に落ちている。グローバルレベルでは、米中戦略競争と気候危機に直面している。地域には不運なことに、良きな隣人がいない。
北米の隣国同士はインフレ抑制法(IRA)の恩恵を分けあい、欧州連合(EU)は炭素国境調整措置を作り、既存のグローバル・サプライチェーンを地域に戻そうとしているこのとき、私たちは正反対に、中国と築いたサプライチェーンを壊さなければならない。国内では人口減少と経済活力低下に苦しむ。両国はそれでも、それぞれがこの高波を越えなければならないのか。
ただ絶望だけがあるのではない。両国の企業は、1990年代から各自の強みに基づいて、第三国で資源開発や発電設備建設などの共同事業を通じて、協力の“味”を体感していることは、意外にもあまり知られていない。それが2022年までに合計129件に達するにもかかわらず、そのうち43%がアジアに集まっている。アジアでの協力事業は、両国の企業の利益だけでなく、地域の発展と連結性の強化、グローバルレベルでの経済安全保障の強化と気候危機の対応にも寄与する共生プロジェクトだ。両国はこの事業を相互信頼回復の呼び水とすることができる。
最近、北朝鮮と日本の国交正常化の議論が浮上している。まだ時期尚早だが、いずれは実現するだろう。そのとき、現在は第三国で行っているように、日本企業の資本力と技術力が、韓国企業の速度感と商業化の手腕に加えて南北経済協力の経験と結びついた北朝鮮内での共同協力が、地域の平和と繁栄を速める火種になる日を想像する。これを欧州統合の基点になった欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の東北アジア版として再現させるということは、まったくのでたらめな夢なのだろうか。第2、第3のECSCを発掘して育てることは、むなしい妄想にすぎないのだろうか。
韓国と日本には、協力しあうインセンティブも力量も十分にある。世紀的な転換期に、両国から互いに良き隣人となり、共に勝者になる旅に出よう。時間はあまりない。
キム・ヤンヒ 大邱大学教授 2024-04-03 10:23
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/49615.html