「酒の飲めない奴は人権がないって感じです。一人や二人が強要するならともかく部署というか、組織全体でそんな感じなんで、この時期は気が重い」
30代の地方銀行員は歓送迎会シーズン真っ只中に心底嫌そうだ。3月から4月にかけては職場、学校、地域の団体などで歓送迎会やお花見、年度末や新年度をきっかけとした「飲み会」が催される。
飲み会、好きな人はいいが、好きでない人もいる。飲めない人もいる。しかしそれでも出なければならない事情がある。いわゆる「コミュ障」や人嫌いはもちろん、もっともやっかいとされるのが「飲酒の強要」、その名もアルコール・ハラスメント(アルハラ)である。厚生労働省にも、
〈日本においては、飲酒による暴言・暴力やセクハラなどの迷惑行為は「アルハラ」と呼ばれており、この「アルハラ」は家庭内だけでなく、社会や職場にも広がっています。2003年の全国調査によると、このような「アルハラ」を受けた成人は3000万人にも達しており、そのうち1400万人はその後の生き方や考え方に影響があったと回答しています〉※『飲酒と暴力』厚生労働省、e-ヘルスネット
〈場の盛り上がりや上下関係による心理的な飲酒の強要「アルハラ」がある場合が多く、注意が必要です〉※『イッキ飲みは死を招く』厚生労働省、アルコール関連問題啓発リーフレット
とある。直近でも3月26日、福井県越前市役所の50代課長が2021年から2023年にかけて部下に飲み会代を払わせる、体をつねるなどの行為を繰り返していたとして懲戒処分を受けた。また2月29日には神奈川県横須賀市役所の30代係長が飲み会の帰りに複数の女性職員に対して同意なく手を握る、体を触る、キスをするなどの行為を繰り返していたとして同じく懲戒処分を受けて同じく懲戒処分を受けている。こうした行為が令和の世にも普通に存在する。