一時保護は、子どもの安全を確保したうえで、心身や家庭の状況を把握し、その後の対応を決めることを目的とする。子どもは、児相の一時保護所か、委託を受けた施設や里親家庭などで生活する。児童福祉法で原則2カ月以内と定められているが、国の調査によると21年度は一時保護件数の14%が2カ月を超えた。半年以上になることも珍しくない。その間に学校に行けないという問題がたびたび指摘されていたが、詳しい実態は分かっていなかった。
毎日新聞は23年11月~今年1月、児相を設置する78自治体に調査し、全ての自治体から回答を得た(名古屋市のみ一時保護委託の実績は未回答)。試験や修学旅行など行事の時だけでなく、日常的に通学したかどうかを測るため、一時保護中に週4日以上通学した小中学生の数を確認した。保護形態別にみると、22年度に一時保護所から通学したのは延べ約1万7500人のうち85人、委託先から通学したのは延べ約1万500人のうち1159人だった(23年10月開設の葛飾区を除く)。
ただ、保護期間が数日にとどまり通学は困難なケースもある。国が22年6~7月に一時保護を解除された子どもの保護期間を調べたところ、1週間以上は7割程度(73%)。これに準じて1週間以上保護された子が週4日以上通学した割合(通学率)を推計すると、6%だった。保護形態別では、一時保護所が0・7%、一時保護委託が15%と差が出た。
一時保護所から日常的に通学した子どもが一人もいなかったのは、8割以上にあたる63自治体。委託先も含めて一人もいなかったのは秋田、富山、宮崎の3県、浜松、神戸、熊本の3市、豊島区(23年2月開設)の計7自治体だった。
通学するかどうかは子どもの意向にもよるが、「希望する子どもはおおむね通学できている」と回答したのは、石川、鳥取両県、福岡、金沢、兵庫県明石の3市、中野、港、荒川の3区の計8自治体だった。「通学率」は明石市が58%と最も高く、福岡市が36%と続き、ゼロの地域との差が目立った。
本人が希望し、親が妨げない場合でも通学が実現しない理由を複数回答で尋ねたところ「送迎の体制が整わないから」が64自治体(82%)で最も多かった。他に「在籍校が遠方だから」が56自治体(72%)▽「登下校や学校生活中に子どもが逃げ出す可能性があるから」が37自治体(47%)――と続いた。
全国の児相職員の研修を担う「西日本こども研修センターあかし」の藤林武史センター長は「一時保護所からの通学は、担当エリアが広い児相ほど難しいが、在籍校に通いやすい施設や里親家庭に委託すれば解決できるはずで、通学率6%は極めて少ない印象。自治体の考え方や取り組み姿勢に大きな差があるのではないか」と話す。
国は一時保護中の通学の制限について、18年の通知で「必要最小限とする」と求めてきた。対応を強化するため、来年度から、通学支援が自治体の努力義務となる見通しだ。【黒田阿紗子、垂水友里香】