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JR東海は昨年12月14日、286キロに及ぶ品川~名古屋間の工事完了時期について、これまでの2027年から「2027年以降」と変更、国に申請した。
「これは事実上の開業延期とみられています」
とは、全国紙記者。
「問題となっている静岡工区は、南アルプスを貫く形でトンネルを掘ることになる8.9キロの区間。川勝知事はこれまで、大井川の流量減少や生態系への影響を理由に着工を認めてきませんでした」
せっかく築かれた地元のコンセンサスを…
もっとも、トンネル掘削によって湧水が生じ、大井川上流部の流量が減るという県側の懸念に対しては、
「工事予定地の下流にある『田代ダム』の取水を減らすとの案をJR東海が提案。知事もこの案には『尊重したい』としています。また先月25日にはJR東海と大井川流域10市町の首長との意見交換会が開かれ、地下水など自然環境への影響を調査するボーリングについて、各首長が早期実施を求めました」
かねて知事はJR側に“静岡の水は全量戻してほしい”と訴えていたが、
「各首長らは“総意”として『田代ダムが取水しない期間中のボーリングで県外に流れた水は、大井川に戻さなくていい』とJR側に伝えました。ところが翌日の会見で知事は『全首長の総意だったか確かめる』と疑い出したのです」
せっかく築かれた地元のコンセンサスをほごにしようとしているのだ。
「反対のための反対」
さる県政関係者が言う。
「知事はもはや“反対のための反対”を繰り返していると言わざるを得ません。というのも、ボーリング調査を行えば着工が危ぶまれる結果が出る可能性もある。まず調査をしなければ始まらず、その点では反対派であっても今回の調査を拒む理屈は成り立ちません」
何しろこれまでも、
「知事は『水』以外にも、リニア工事にゴーサインを出さない理由を挙げてきました。それは『土』問題で、静岡工区の工事では370万立方メートルの土が出ます。知事は一昨年、この残土置き場を視察しており、『深層崩壊を起こす可能性がある』と主張したのです」(同)
こうしたあの手この手の戦法によって、
「県内の自治体の首長らとの間に生じていた“ズレ”が顕在化しています。先月25日付の中日新聞には大井川流域自治体のまとめ役的な立場にある染谷絹代・島田市長が登場し、『知事の権限を逸脱した方へ話が広がって、議論を分かりづらくしている』と痛烈に批判しています」