だが、2022年6月に大麻を合法化すると、2023年11月までに全国の町や都市にはディスペンサリー(大麻販売所)6000店以上が開店した。
大麻解禁は、あくまで医療等を目的とする使用や栽培で、娯楽目的での使用は認められていないというのだが、
世界中から観光客が大勢押し寄せるなど活況を呈している。
バンコク・ポストによれば、最新の調査としてタイ国内の大麻市場規模は2025年には約430億バーツ(約1700億円)に達するらしい。
■大麻が合法の国
カナダやウルグアイは大麻の嗜好や医療目的が合法な国として知られている。
米国、オランダ、英国、スペイン、ドイツ、ベルギー、オーストリア、ポルトガル、フィンランド、イスラエル、韓国などは一部の区域で、
大麻の吸引が非犯罪化、または医療目的としての使用は合法である。
インドやネパールなどでは古来より大麻の吸引が一般的な文化として定着しており、現在もシヴァ神への供え物として、大麻入りのラッシーが多く消費される。
一方で、スリランカ、マレーシア、シンガポール、中国では許可なく製造、所持、使用すると刑罰が科され、死刑を科す国もある。
■麻は稲作よりも古い最古の栽培植物
※略
大麻とは麻の別称で最も古い栽培植物の一つ。その歴史は1万年以上前にさかのぼる。
種を撒けばすぐ自生し、施肥や間引きの手間もかからず、収穫が早い。
麻は最古の織物原料であるが、その用途は繊維で服を繕うだけでなく、種子は食用や油、葉は吸引による陶酔を楽しみ、また病気治療などにも用いられた。
紀元前2700年古代エジプト・メンフィス王朝時代の古墳には亜麻の収穫を描いた壁画がある。
大麻の効能については、紀元前1700年にインドで編纂された、『リグ・ヴェーダ』には陶酔感をもたらす飲み物として崇められたとあり、
紀元前1500年に綴られた『アタルヴァ・ヴェーダ』では不安を解消する神聖な植物の一つと紹介されている。
紀元前700年古代ペルシャ・ゾロアスター教の教典、『ゼンドアヴェスタ』にも大麻が麻酔薬・鎮静剤であり、「幸福の源」としている。
※略
■穢れを落とし、魔除けになる大麻
※略
古代より天皇即位の大嘗祭に供える麻織物・麁服(あらたえ)は神座に祭られ、麻織物は神が憑依する「より代」とされ五穀豊穣が祈られる。
大麻は穢れを落とす、魔除けになると信じられ、乳児の産着には麻模様のものが昔から使われてきた。
※略
■爆発的に増えたタイの大麻販売所
かつて、タイでは大麻が普通に流通し、大麻を吸引したり、大麻オイルをコーヒーカップに垂らしたりして飲む習慣が一般的だった。
しかし、1979年に麻薬法が強化されると、死刑など厳罰に処せられるようになり、警察によって殺害された人々は数千人にも上るという。
タイの前政権であるプラユット暫定政権は2017年、大麻で死刑が執行されないよう政策転換を図り、2018年、医療目的での大麻が一部合法化された。
さらに2022年6月になると、大麻を麻薬指定から除外、大麻の家庭栽培が解禁となり、大麻で有罪となった受刑者3000人が釈放された。
また、一部大麻製品の個人使用も認められるようになった。
※略
■いざ、ディスペンサリーへ
※略
オシャレな雰囲気のカフェが併設されたディスペンサリーショップでは、女性スタッフが通りかかる観光客に微笑みながら声をかけてくるので入りやすい。
中に入ると大麻の入った瓶がずらりと並んでいる。
※略
タイでは昨今、大麻に対する法律が変わり、娯楽目的の吸引や公共の場での大麻喫煙は最大3か月の禁錮刑や最大2万5000バーツの罰金を科せられる可能性があるという。
だが、タイの観光地や繁華街には、若者や外国人観光客を狙ったディスペンサリーショップが至る処に存在し、店は吸飲場所も提供している。
ならばタイ新政権の主張する医療目的というのは、気分転換やリラックス効果を求めて、薬局で精神安定剤を求めるのと、
大麻販売所で吸引目的で大麻を購入することは同じであると、広義に解釈できるものなのだろうか。
でなければ、なぜ、これほど多くの店が観光客や若者相手に、正々堂々と商売できているのか、理解に苦しむのである。