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サッカーに「シンビン」はなじむのか ラグビーとの文化的、競技的な違いで試合はつまらなくなる?
https://www.sanspo.com/article/20240226-QS5V3PR6WZPDDL6AFRNXHK67OA/
2月初め、「シンビン」に関するトピックスが世界を駆け巡った。といっても、ラグビーではなくサッカーの話だ。
複数の英紙の報道によると、効果的なカウンターなど相手の「有望な攻撃」を断ち切る戦術的なファウルを犯したり、審判の判定に異議を唱えたりした際、その選手を10分間、ピッチの外に一時的に退場させる「ブルーカード」を今夏から導入する方針を、サッカーのルールに関する意思決定機関である国際サッカー評議会(IFAB)が示したという。
ブルーカード制度は現在、英国のアマチュアレベルの試合で採用されているが、3月2日のIFAB年次総会で、より高いレベルの試合でも試験的実施することを承認する見込みというのだ。
10分間の一時退場はまさにラグビーと一緒だが、ラグビーの歴史をたどると、テストマッチで最初にシンビンとなったのはオーストラリアのCTBジェームス・ホルベックだという。1997年の南半球3カ国対抗(現ラグビー・チャンピオンシップ)の南アフリカ戦でのことだ。それ以前にもイエローカードの制度はあったのだが、それまでは現在のサッカー同様、警告を与えるだけのものだったという。ちなみに日本では1996年に規則化された。
ラグビーではすっかり定着したシンビンだが、さて、サッカーではどうなるのか。そもそもサッカーにはなじまないのではないかという意見は多い。日本でも有名なイングランド・プレミアシップ、リバプールのユルゲン・クロップ監督は、ブルーカード制度を「試合が複雑になるだけ。もっとシンプルであるべきだ」と批判した。
レッドカードがあり、イエローカードもあり、さらにブルーカードとなると、基準が何になるのかをはっきりしなければ混乱が生じるだろう。一貫性がおおいに問題になりそうだ。「審判への異議」が項目に入っているということは、いかにそういう事例が多いかという証左でもある。審判へのリスペクトの差は、サッカーとラグビーの大きな文化的な違いともいえる。もんちゃくを解決するための手段が、新たなもんちゃくを生むということにもなりかねない。
他のプレミアシップ関係者も「人数が減ったチームはディフェンスラインを下げて守ろうとするだろうし、プレーが切れるたびに時間稼ぎもするだろう。試合をつまらなくするだけ」と口をそろえている。このあたりも〝専守防衛〟では必ずスコアされてしまうラグビーとの競技としての質の違いがあるだろう。
早ければ、7月の新シーズンの競技規則に掲載される可能性があるサッカーのシンビン。果たして、スムーズに採用されるのだろうか。(田中浩)