しかし、「恋愛経験のないまま中年男性になってしまうと、幸福にはなれない」と主張するのは、アラフォー男性の生態に造詣が深いネット論客のポンデベッキオ氏だ。最近話題のネットスラング「チー牛」という視点を通して考察するーー。
●ネットでよく見かけるスラング「チー牛」とは何か
「チー牛」というネットスラング。聞いたことがある方も多いだろう。就労支援施設で働く覇気の無い男性の特徴がイラスト化されたものが元ネタだ。そのイラスト内では、大手牛丼チェーン「すき家」の商品である「とろ~り3種のチーズ牛丼」を注文している姿が描かれていたことから、イラスト内の男性のようにメガネをかけた弱々しい男性のことを、ネットの住民たちはいつしか「チー牛」と呼ぶようになった。
生気のない幼い表情、小学生のような髪型に眼鏡、控えめなアゴと華奢な体つきからは、テストステロンの少なさがにじみ出ているように見える。弱者男性の特徴を鋭くとらえた「チー牛」のイメージは瞬く間にネットに拡散された。今や「チー牛」は、非モテ男子や、いわゆる「弱者男性」を馬鹿にするスラングとして、不動の地位に君臨している。
●20代で「チー牛」でも慌てることはない理由
しかし筆者は以前から感じていることがある。20代のうちは、チー牛のままでいても男性は全然慌てなくていい。チー牛のイラストを見て「うわぁ俺じゃん……」と落ち込んでいる若い男子がいるかもしれないが、正直何も気にする必要はない。チー牛属性なんて、若ければいくらでもデトックス可能である。
20歳~49歳の未婚の1200人への調査(リクルートブライダル総研「恋愛・結婚調査2023」)によると、現在、「交際経験なし」という20代の男性は46%だという。つまり、20代男性の約半数が、多かれ少なかれ、チー牛なのだ。
【中略】
●ネット論客「独身中年男性に社会が冷たいのは、昭和も令和も変わらない」
道徳的な建前があるので誰も表立っては言わないことであるが、何者でもない独身中年男性に世間の風当たりは非常に厳しい。いくら「ポリコレ」を意識する世の中になったとはいえ、その点については昭和も令和も変わらないのだ。
実態として、中年おじさんは結婚して子供を授かることで初めて社会の一員として社会に包摂される。本音と建前はやはり違うのだ。「世間はお一人様でも楽しい人生!」などと建前を並べ立ててはいるが、本音の部分では「アラフィフにもなって未婚の人間には何か問題があるのではないか?」「共感力や協調性に欠けた人物なのではないか?」と考えている人もいまだに少なくない。「チー牛デトックス」ができずに独身のまま中年になった男性は、本人にそんなつもりは一切なかったとしても社会から危険分子として警戒されてしまうのだ。
そのため、「脱チー牛」できなかった独身中年男性がママさんと子供たちで活気づく公園に突撃すれば一瞬で公園の空気はピリついてしまうのだ。おっさんに近寄って来てくれるのは「こいつ寂しそうだし俺らに餌をくれるタイプのニンゲンじゃねーか?」と期待する鳩たちだけだ。しかしもしおっさんの後ろにボールとグローブを持つ子供と赤ちゃんの乗ったベビーカーを押す奥さんがいた場合はどうだろうか? 公園の空気はほどけ、危険分子と見做されていたおっさんは優しいパパさんへ…