2つの手口が目立っていることから、都道府県警察が受理した被害届をもとに警察庁が初めて集計した。23年の被害額はSNS投資型詐欺が約277億9千万円、ロマンス詐欺が約177億3千万円で、合計すると特殊詐欺(暫定値で約441億円)より多かった。
SNS型投資詐欺は、投資家をかたるなどして金銭や暗号資産(仮想通貨)を詐取する。SNS上の偽の投資広告をクリックさせたり、ダイレクトメッセージを送ったりして被害者と接触し「確率の高い資産運用がある」などと持ちかける。
1件あたりの平均被害額は約1223万円で、1億円超の被害も26件あった。最も大きい被害額は約3億4千万円だった。
ロマンス詐欺は外国人や海外在住の日本人を名乗り、マッチングアプリなどで被害者に接触する。恋愛感情や親近感を抱くように仕向けたうえ、投資名目で資金を詐取する手法が多いという。平均被害額は約1125万円で、最大は約3億6千万円だった。
犯人側が詐称した国籍は中国や韓国などが含まれる「東アジア系」が最も多く、全体の35.2%を占めた。「日本(在外)」が17.8%、「東南アジア系」が12.1%で続いた。
いずれの形態もSNSやアプリを介し、投資名目で金銭をだまし取るケースが多いのが特徴だ。被害者の年齢層は40〜60代が全体の70%を超えた。被害者の8割近くを65歳以上が占める特殊詐欺と比べると、中年層の割合が高い。
警察庁はSNSの普及に加え投資への関心の高まりも背景にあるとみている。日銀の23年7〜9月期の資金循環統計(速報)によると、家計での株式などの保有残高は同年9月末時点で前年同期比30.4%増の273兆円、投資信託は同17.4%増の101兆円でいずれも過去最高だった。
警察庁は両手口の捜査や抑止策を強化するため、刑事や組織犯罪対策、サイバーなどの部門を横断するプロジェクトチームを設置するよう都道府県警に通達した。投資詐欺サイトに誘導するSNS上の投稿や偽広告についてはネット事業者に削除を依頼する。
ロマンス詐欺では海外拠点の犯罪グループによる関与が疑われる場合もある。海外の捜査機関との情報交換や捜査共助も進める。