朝日新聞
女性のみなさん。女らしく話すと気持ちがうまく伝わらないと感じませんか。多くの女性が当たり前のように使う「女性のことば」がはらむ問題について、昨年「女ことばってなんなのかしら? 『性別の美学』の日本語」(河出新書)を出した翻訳者・平野卿子さんに聞きました。
――著書で書かれた「女ことば」とは、どんなことばを指すのですか。
①語尾に「のよ」「わ」「かしら」などを使う②「うるせえ」「知らねえ」などなまった母音を使わない③「尻」「畜生」といった卑語や罵倒語を使わない④「お花」「お砂糖」など接頭辞「お」を付ける⑤感動詞は「あら」「まあ」などを使う⑥敬語をよく使うといった言葉遣いのことです。このようないわゆる「女ことば」とは別に、相手の意をくみ、謙遜し、へりくだる話し方を「女らしい言い回し」として論じました。
――女性の言葉遣いに興味を持ったのはなぜですか。
私はドイツ語の翻訳者です。30年ほど前、ドイツの小説にあった男性のセリフを「とっとと失せろ、この野郎! 貴様は疫病神だ」と訳した時、胸がスカッとして今までにない快感が走りました。「男のことば」には、気持ちを解放させる効用があると気付いたのです。同時に、自分がそれまで「女ことば」を使っていたことに気が付き、なぜ日本には「女ことば」があるのだろうと不思議に思いました。