「これはおかしいなと思う。1965年の協定ですでにおしまいになったはずだ」
ラムザイヤー氏は、日立造船が韓国の裁判所に預けていた供託金が原告側に支給されたことについて、こう疑問を呈した。
同氏が指摘する通り、元徴用工や慰安婦問題を含めた日韓間の請求権については、65年締結の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」が確認されている。日本政府は当時、無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドルを韓国政府に提供した。元徴用工に資金が渡らなかったのは韓国政府の問題でしかない。
ところが、韓国側の一方的な蒸し返しによって、日本企業が賠償を命じられるという「異常判決」が相次いでいた。尹錫悦(ユンソンニョル)政権は昨年3月、日本企業の賠償を韓国政府傘下の財団が肩代わりすることなどを表明したにもかかわらず、約束は果たされず、日本企業に「実害」が発生した。
ラムザイヤー氏が、元徴用工訴訟をめぐって韓国で起きた事態を「おかしい」と感じるのは、慰安婦問題でも同様の蒸し返しが行われ、今も日本批判の材料として使われているからだ。
慰安婦問題については前出の日韓請求権協定に加え、朴槿恵(パク・クネ)政権下の2015年12月、日韓両政府が「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。16年には元慰安婦の支援を担う「和解・癒やし財団」が発足し、日本政府も10億円を拠出した。だが、朴政権の後に誕生した左派の文在寅(ムン・ジェイン)政権は18年11月、財団の解散を一方的に発表した。
ラムザイヤー氏は「慰安婦問題は、元慰安婦が財団から現金をもらった上で終わるはずだった。ところが、財団も政権交代を受けて一方的に解散した。あきれた」と韓国側の対応を振り返る。