近年「中抜き」という言葉をよく耳にするようになりました。例えば、能登半島地震で避難をしている人に配られる弁当が、貧相な内容なので「中抜き」されているのではないか、という議論がありました。弁当といえば、コロナ禍の時期にビジネスホテルに強制隔離された入国者に配られる弁当も貧相だと問題になったことがあります。この時はハッキリと国が払う1日2700円の予算の中から、ホテル側が経費として700円を差し引いていたということが明るみに出ていました。
コロナ禍の期間中は、例えば入国時の検疫に大量の人員が動員されたり、高額なPCR検査が大規模に実施されたりしましたが、これも非正規雇用者や医療従事者には国から直接報酬は払われませんでした。国はあくまで契約した派遣業者や場合によっては旅行代理店などに、まとまった支払いをするだけで、こうした法人が得る利益のことも「中抜き」だと非難されていました。
より構造的なのは、今回2024年問題としてクローズアップされている、運送業や建設現場の問題です。トラック輸送の仕事は、ドライバーが直接荷主から報酬を受け取るのではなく、間に多くの中間業者が介在しており、ドライバーの報酬は低く抑えられています。建設現場での職人への報酬にも似た構造があります。
まさに、日本経済は「中抜き」経済と言っても良さそうです。では、本来は生産者やサービス提供者に払われるべき報酬を減らし「中抜き」された利益はどこへ行くのかというと、中間業者の経営者やオーナーなどが「山分け」して豪華な生活をしているのではありません。
■「事務部門の維持費」という固定費
中間業者、例えばホテルのマネジメント会社、人材派遣業者、運送業者、ゼネコンや一次下請、問屋、商社などは、それぞれ企業としての体裁を維持しています。ですから、固定費として、毎月一定の費用を負担しています。その中でも、総務、経理、人事、営業管理、顧客管理、契約書管理などの事務部門は、一定の業務量があり、そうした部門を維持する費用は、景気の善し悪しにかかわらず負担しなくてはならない固定費となっています。
この構造、経済のあらゆる段階に「事務部門の維持費」という固定費がかかるために、現場の報酬が上がらない、これが「中抜き経済」の大きな問題点です。「中抜き」のカネが流れる先の事務部門も、決して豊かでないし、何よりも間接部門の事務作業だからといって定型的で楽な仕事ではありません。様式やハンコを伴う複雑な規則に縛られストレス満載の業務であることが多いと思います。制度の全体としては、人々を決して幸福にしてはいません。
更にこれに加えて、近年では現場の人材不足という問題が出てきています。トラックドライバー、バスドライバー、建築現場の職人などの現場仕事では、極端な人手不足が指摘されており、このままでは社会が崩壊する瀬戸際に立たされています。このような現場における人手不足はやがて全産業に及ぶでしょう。
ということは、社会として改革の方向性はほぼ絞り込まれると思います。
以下ソース
定期的に流行る日本式ジョブ型雇用化と似たような論調に感じる
日本人が事務部門の効率化をしようとすると、大抵は事務職の人間には現場仕事を
現場仕事の人間には事務仕事もやらせるようになる
中抜きを無くすというよりコストカットのために総派遣社員みたいにして
マルチタスクと丸投げばかりが進んでいくという
朝日(経済気象台)ピンハネ経済を終わらせろ 2020年 6月6日
日
~コロナ危機で特に深刻な影響を受けたのは、個人向けサービス業を始め、多くの中小零細企業や
非正規労働者などだ。~。その背景にあるのは、、外出自粛の影響が大きい業種特性だけでなく、外的ショックへの抵抗力を奪ってきた経済の在り方と、
それを促した政策だ。
1990年代以降、企業は非正規社員を増やし、賃金を抑え、取引先にコスト削減を求めた。こうして回復させた収益は投資ではなく株主還元や手元資金として使われた。
この為、成長力は回復せず、賃金が落ち、雇用が不安定となり、度重なる消費増税によって家計消費が委縮した。~中略~
アベノミクスは、経済再生どころか、中小企業や家計という重要な経済基盤~
重要な経済インフラを弱体化させ、経済社会をより脆弱にした。
換言すれば、効率化の名の下に中小企業や家計からピンハネしたお金を一部の既得権益層に独占させ、国民の豊かさ実現に使わなかった。
そのことが、コロナ過をより甚大なものにしたのである。
厄災を乗り切ろうと必死に努力する多くの人々の気持ちが萎えないうちに、このような経済システムを変えなければ、日本の経済社会が立ち直ることは無い。
ttps://twitter.com/sakaitoshiyuki0/status/1509395023179231236
さかいとしゆき (Sakai Toshiyuki)
@SakaiToshiyuki0
メキシコでは人材派遣は原則禁止に…。
「法律が定める福利厚生や社会保険が提供されていないことを問題視」
「解雇しやすいため、年末の解雇増の要因になっている」
「人材派遣の過度な利用で、労働者の権利や経済活動が侵されている」
日本経済新聞
2021年4月21日