ー前略ー
・小児科医になっても続けることが難しい
病院は民間であるにもかかわらず、運用や管理方法は政府が決めている。日本の厚労省に当たる保健福祉部の権限が強く、
勤務医たちは自らを「医奴」と呼ぶ。医師は奴隷であるという意味だ。
韓国の小児医院が保険適用内の診療だけをした場合、黒字経営はまず難しい。
子どもの医療費は非常に安く、1回当たりの本人負担金は300円ほどである。
韓国の健保は基本的に3割負担で、1歳以上6歳未満の子ども負担金は、大人の3割負担の70%だ。
大人より少し安くはなるのだが、医院の収入は大人に比べ子どもは歩合が悪いのだ。
そして、最近の韓国では患者による医療訴訟が急激に増え続けている。
原告側が子どもの場合、期待余命が長いために保障額がかなりの額になり、理不尽な訴訟にあうことも多い。
小児科医を辞め、内科医や美容医になる医師が後を絶たない。
小児科専門医がいないのではない。小児科専門医になっても、小児科医を続けることが現実的に難しいのだ。
この部分は単に医師を増やしても解決しないだろう。
もう一つの大きな問題は、地方の医者不足の問題である。
日本でも、地方自治体が高額の報酬で求人を出しても、集まらないという問題は聞くが、韓国の医師不足は深刻だ。
地方にも総合病院は存在する。実際に筆者の住む地方にも大学病院があり、日本の大学病院に勝るとも劣らずの設備がある。
韓国の医療水準は決して低くない。筆者の夫も10年前に胆石がたまり、腹腔鏡で胆嚢の摘出手術をした。その後も何の問題はない。
しかし、近隣の住民たちはその大学病院には行かずに、ソウルのもっと大きな総合病院に行きたがる。
ソウルにはビッグ5と呼ばれる、巨大な総合病院がある。
全国民がそのどこかに行きたがるので初診の予約を取るもの難しく、常に外科系の手術は1年待ちである。
韓国人はブランドや名声に弱く、意味もなく、身分不相応にレベルの高いものを望む。
地方の大学病院のことはバカにして、自分はソウルの「一流の治療」を受けるべきだと信じて止まない。
筆者の周りにも、ソウルの大学での手術を6カ月ほど待っている人が何人かいる。
これではソウルに大病院がいくつあっても、医師が何千人いても足りないし、地方の大学病院はますます衰退していく。
・医師だけが悪者になっていく現実
実際にソウル近辺には、大学系総合病院がいくつも建設されていて、2027年までには5つほどの大病院が開院するという。
これでは根本的な問題解決にならないと昔から医師たちは訴えている。
問題は政府のやり方と国民性にあるのだと。
この言葉の意味は、外国人の筆者には良く分かるが、この国の国民のほとんどは理解することができずに、
医師がどんどん悪者になっていく。
ー中略ー
今回の医療改革政策を進めていく過程で、政府側が言っている言葉は常に「国民のために」である。
ただ、それが本当に国民のための改革なのかは、大きな疑問を抱かずにはいられない。
興味深い話を聞いた。この政策を推し進めているのは、保健福祉部の第2次官であるパク・ミンス氏である。
彼には娘がいて、今年高校3年生になると言うのだ。これは果たして偶然なのか。
そうでなくても、韓国では文在寅政権時の法務部長官だった曹国の娘が不正に医大入学して大問題になった。
彼だけではなく、某大物政治家の息子も不正な推薦入学で医大に入り、しれっと医師になったといううわさが今でも絶えない。