◆「首相は関係幹部に何も指示しなかった」
与野党は同日、首相と、二階派事務総長を務めた武田良太元総務相が29日に、安倍派で事務総長だった西村康稔前経済産業相、松野博一前官房長官、塩谷立元文部科学相、高木毅前国対委員長の4人が3月1日に政倫審に出席することで合意。6人とも本人の弁明や議員の質疑を報道機関に全面公開し、1人当たり1時間20分の審査となる。
首相は2月27日の段階で、安倍派と二階派の5人を念頭に「党としても説明責任を果たすよう促してきた」と語っていた。だが、公開、非公開は議員の意向を尊重するとした政倫審のルールを盾に「関係幹部に何も指示しなかった」(安倍派議員)もようだ。
もともと与野党は、5人を対象とした政倫審の28、29両日の開催で大筋合意していたが、公開を巡って自民の対応が二転三転し、協議が決裂。2024年度予算案を本年度中に確実に成立させる衆院通過の期限(3月2日)が3日後に迫る中、追い込まれた首相が自身の政倫審出席と審査の全面公開を急きょ打ち出したことで、残る5人も全面公開での出席を余儀なくされたとみられる。
◆「一体何の弁明をするつもりか」批判噴出
ただ、政倫審での発言は証人喚問と違って偽証罪に問われず、問題追及の場としての機能は限定的だ。首相はこれまで「党としても実態把握に取り組んでいる」と説明してきたものの、事件の真相解明には後ろ向きだった。安倍、二階両派の5人も組織的な裏金づくりへの関与を否定している。
共産党の田村智子委員長は28日の記者会見で「衆院予算委員会で、首相は全く真相究明にならない不十分な答弁をしてきた。政倫審で一体何の弁明をするつもりか」と批判。衆院政倫審の野党筆頭幹事を務める立憲民主党の寺田学氏も「『分からない』『記憶にない』と言わず、疑義に対してきちんと説明すべきだ」とけん制した。