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那須川天心の現在地は……競合ひしめくバンタム級戦線を生き残れるか
24日、東京・両国国技館で行われたWBA世界バンタム級タイトルマッチで、王者・井上拓真が初防衛に成功。同じリングで中谷潤人がWBC同級王座に挑み、フライ級、スーパーフライ級に続く3階級制覇を成し遂げた。
つい最近まで、バンタム級は井上尚弥の独壇場だった。だが、2022年12月にWBA、WBC、IBF、WBOという主要4団体の王座を統一し、直後にベルトを返上。スーパーバンタム級に階級を上げたことで散り散りになったベルトのうち2本を、再び日本人が保持している現状である。
さらに5月にはIBF1位にランクされている西田凌佑が同王者のエマニュエル・ロドリゲスに挑戦することも決まっている。難敵中の難敵だが、もし西田が勝てば4団体中3団体の王座を日本人が同時に保持するという前代未聞の事態になるのだ。
彼ら3人だけではない。最新のランキングでは石田匠がWBOとIBFで3位、WBA1位。日本王座を返上したばかりの堤聖也がWBC9位、IBFとWBAで4位。元WBCフライ級王者のパンチャー・比嘉大吾がWBOとWBAで5位、WBC7位、IBF10位。栗原敬太がWBC6位。元K-1王者でOPBF東洋太平洋王座を獲得している武居由樹がWBCとIBFで10位。さらにこの日、WBO6位のジョナス・スルタンを1ラウンドKOで葬った増田陸も世界ランク入りが確実視されている。
これだけ多くのボクサーが世界ランク入りしている現状は、日本ボクシング史上においても極めて異例だ。今年1月、3戦目にして念願の初KO勝利を挙げた那須川天心にとって、国内だけでこれだけ“格上”の選手がいるということになる。
知名度だけでいえば、圧倒的なトップは那須川だろう。世界王者の中谷も井上拓真も後塵を拝するしかないところだ。だが、実力的には那須川はどの位置にいるのだろうか。ジム関係者に話を聞いた。
「トップは中谷で間違いないでしょう。バンタムに上げてきて、昨日のパフォーマンスは目を見張るものがありました。長身ですし、将来的にはさらにウエイトを上げて井上尚弥との対戦まで見えてきます。次点では、やはり拓真。手堅い試合運びでファンからの評判は『退屈な選手』一色ですが、スピードとスタミナは一級品。さらに昨日、強豪のアンカハスをKOしたことで覚醒する可能性もあります。この2人はまだ那須川とは別格というところでしょうね」
だが、世界王者2人以外なら今現在でもチャンスはあるという。
「まずスピードという面で、この中では那須川がいちばん速い。栗原、比嘉、それに武居といったパンチャータイプとはかみ合うでしょうし、スリリングな試合が見られそうですね。難しいのは西田と堤。特に堤はここ数試合、フィジカルで上回る相手をテクニックと根性で攻略していて、底知れない対応力がある。エリートがこういう泥臭い選手に足元をすくわれるのも、ボクシングではよくあることです」