「戦争はいつ終わるのかと聞かないでほしい」。ウクライナのゼレンスキー大統領は今月、ドイツ南部で開かれた「ミュンヘン安全保障会議」で、戦局の行き詰まりにいら立ちを隠さなかった。
ウクライナでは昨年5月、ロシア軍の猛攻で東部ドネツク州の要衝バフムトが陥落。翌6月からの反攻でも形勢は好転せず、今月に入ると同州の激戦地アウディイウカまで制圧された。
「われわれは反攻の行方を過度に楽観していた」(エストニアのカラス首相)ため、落胆も大きい。シンクタンク「欧州外交評議会」がドイツ、フランスなど欧州12カ国の有権者ら約1万7000人から回答を得た1月の世論調査では、ウクライナの勝利はもはや難しく「欧州はウクライナに働き掛けて、ロシアと和平交渉させるべきだ」との意見が41%に上った。「ウクライナの領土奪還を支援すべきだ」は31%にとどまった。
1年前の調査では「ウクライナは戦争が長期化しても、全ての領土を取り戻す必要がある」との主張が38%を占めていた。昨年8月、サルコジ元仏大統領がウクライナによる領土の完全回復は「幻想だ」と発言した際は、批判が殺到した。だが、ロシアに有利な戦況が日々伝わる中、世論は理想と現実のはざまで刻々と変化を遂げている。
欧州では昨年、最大の経済国ドイツがマイナス成長に沈み、今年も多くの主要国で景気低迷が見込まれる。皮肉にも、制裁を科されたロシアの方が戦時体制下で好況だ。こうした欧州の懐具合も今後のウクライナ支援に影を落とすとみられる。
歴史的にウクライナとつながりが深く、欧州の軍事支援を主導してきたポーランドでは、安価なウクライナ産穀物の輸入に反対する農家の激しい抗議行動が続く。ウクライナ避難民への視線も厳しく、ポーランドにとって「脅威だ」との見方は40%に達した。