「引き続き刷新本部でバシバシご自分の意見をおっしゃってください」
菅義偉は目の前で調子良くまくしたてる岸田文雄を訝しげな目で眺めていた。いままでとはどこか雰囲気が違う。この男、何を考えているのか……。
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2月8日、岸田は突如として議員会館の菅事務所を訪れた。
「菅さんに乗り換えたのか?」「麻生(太郎)さんへの当てつけだろう」
永田町には疑心暗鬼が渦巻いた。岸田の狙い通りだった。『中央公論』3月号のインタビューにはこう答えている。
〈「発信する力」についてもより充実させていきたいです〉
これまでは自民党の長老たちの顔色を窺い、ろくに言いたいことも言えなかった。しかし、老人が牛耳る派閥政治の時代は終わった。これからは「個人が発信」する時代だ。そして菅訪問こそが、岸田が麻生へ送った明確なメッセージだった。
「麻生さんは元岸田派の上川陽子外相を『このおばさん、やるねえ』と持ち上げた。要は『ポスト岸田に担ぐぞ』と岸田さんを牽制したわけだ。
森が車椅子から立ち上がった!
これに岸田さんがキレた。そっちがその気なら、こちらは菅とだって手を組むんだとやり返した」(自民党関係者)
麻生は慌てふためいた。おとなしくなると思っていた岸田が、ますます噛みついてきたからだ。
「上川さんを本気で担ぐとなれば、総理の座を狙う河野太郎さんや茂木敏充さんまで離れていってしまう。麻生さんとしては、あくまで岸田さんに釘を刺すために上川さんの名前を出しただけでした」(同上)
自分に尻尾を振りそうな部下を物色し、カマをかけて主導権を握ろうとする―。こうした「長老仕草」がかえって人心を遠ざけていることに、麻生は気づいていない。
窮地に陥った長老がもうひとりいる。裏金問題でバラバラになった元安倍派のドン・森喜朗は、もはやヤケなのか、全方位に攻撃をしかけている。
「安倍派幹部の離党論が浮上した際には、麻生さんと茂木さんを怒鳴りつけた。普段は車椅子で移動している森さんが、怒りのあまり自分の足で立ち上がり、歩いて麻生事務所に乗り込んだそうです」(全国紙政治部記者)
文部科学大臣の盛山正仁、官房長官の林芳正と、相次いで元岸田派幹部と旧統一教会との接点が明らかになっているが、これも森が岸田を牽制するために「安倍派幹部から新聞へリークさせた」(元自民党幹部)と噂される。
森がこれだけ必死なのには理由がある。