同校の津山憲司校長らが同日、記者会見で明らかにした。報告書などによると、男子生徒は21年3月10日、部内のいじめや顧問の言動について記した遺書を残して自殺した。同校はいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」に認定。第三者委で調査し、昨年9月に報告書をまとめたという。
報告書は先輩らによる計10件の行為を、いじめと認定。男子生徒は1年生のとき、部室内で部員10人以上の前で、畳の上に身体を粘着テープなどで貼り付けられ、わいせつな行為をされた。さらに、それを撮影した動画もSNSで他の生徒に拡散されたという。学校によると、いじめに関わった1人は、22年1月に家庭裁判所の少年審判で強制わいせつの非行内容が認定され、2年の保護観察処分とされた。
また、顧問である30代の男性教諭から剣道部の寮への再入寮を拒否されたり、大量の課題を課されたりしたことも、生徒の自殺に影響を与えた可能性があると指摘した。
調査では、生徒と母親がいじめの内容の一部を顧問に訴えていたにもかかわらず、顧問は学校側には報告していなかったことも分かった。
ただ、いじめは自殺の一因になったとする一方、家庭環境の影響も少なくないなどと指摘し、「自死は数々の事実が相まって引き起こされたと判断したものの、自死の直接的な原因は特定できない」とした。
学校側は再発防止策として、「学級担任より部活顧問の影響力が強い風土をなくす」「生徒が部活の悩みや問題を相談できるツールを導入する」といった対策を挙げた。
一方、顧問は現在も教諭として授業や部の指導を続けているという。ただ報告書によると、顧問は17年に、部員の頭をハンガーでたたく、顔を拳でたたくなどの体罰で、出勤停止1カ月の懲戒処分を受けている。
今回の調査でも、複数の部員や保護者へのヒアリングで、他の部員に対して「頭がおかしい」「お前は馬鹿なの?」「剣道やめろ」などと人格を否定する暴言があったとされた。これについて、津山校長は「学校の生徒アンケートや、顧問本人の聞き取りでは確認できなかった。本人は、17年以降は暴言などは一切していないと話している」と説明した。
生徒の母親はこの日、代理人弁護士を通じ「剣道が本当に好きだったので、自分らしい剣道ができなくなっていくことはとてもつらいことだったと思う。第三者委は、自死の直接的な原因はわからないと判断しており、とても残念に思う」などとするコメントを出した。
部活内でのいじめを原因とする子どもの自殺は相次いでいる。15年に名古屋市立中学校で卓球部だった男子生徒が、他の部員から悪口を言われたことなどが原因で自殺。20年には、北海道登別市立中学の男子生徒が同じ部活の生徒から身体的な特徴をからかわれ自殺する問題も起きた。