自民党派閥の政治資金パーティーの裏金事件を巡り、16日午前の衆院財務金融委員会で、怒りの声を張り上げていたのが立憲民主党の江田憲司議員(67)だった。
江田氏はこの日から、2023年分の所得税の確定申告の受け付けが始まったのを受け、「この(裏金)問題に対する(国税庁の)対応を間違えると大変なことになる」として、国税当局が裏金議員らに対する税務調査を実施するべきだと主張。
さらに、江田氏は都道府県選挙管理委員会の多くが公表している政治資金をめぐる課税、非課税の考え方に関する資料を示し、記載されている「得た収入を政治活動以外のために使用するような場合については、当然に課税の対象となりますし、また、政治団体が得た収入をその構成員で分配するなどした場合については、その受取者において課税されることとなります」との部分を引用。安倍派や二階派で行われてきた派閥パーティーの各議員へのキックバックはこの事例に当てはまる行為として、「国税庁は看過するのか」と迫った。
■日本が「脱税天国」になりかねないと懸念する国民は少なくないのでは…
裏金事件を巡っては、すでに市民団体が所得税法違反(脱税)の疑いで、安倍派幹部ら10人に対する告発状を東京地検に提出。岸田文雄首相(66)が衆院予算委で、脱税との見方が出ていることについて、「検察は処理すべきものは厳正に処理した。課税は国税庁などが判断すべき課題だ」と答弁していることから、税務当局の対応に注目が集まっていた。
このため、江田氏も国税庁に「当然、税務調査に入るのでしょうね」と何度も確認したのだが、答弁に立った国税庁次長は「一般論として、政治家個人が政党から政治資金の提供を受けた場合には、所得税の課税上の雑所得の収入」とは言うものの、それ以上は踏み込まず、「適切に対応」を繰り返すばかりだった。
「国税には全くやる気がない。こんなことで済むのか」。税務当局の煮え切らない態度に江田氏がいらだちを募らせていたが、無理もない。自民党が15日に公表した、安倍・二階両派など8派閥・グループの国会議員、担当者ら91人を対象に実施した聞き取り調査によると、不記載は「判然としないものの、遅くとも十数年前から行われていた可能性が高い」と常態化が指摘され、裏金を「使用していなかった」と回答した31人のうち、13人が「不明朗な金銭だったから」と答えているからだ。
つまり、多くの議員が「怪しいカネ」と分かった上で保管(貯蓄)し続けていたのであり、これが課税上の雑所得と判断されないのであれば、なんでもアリになりかねない。
安倍派では派閥からのキックバックは金融機関の口座経由ではなく、各議員の秘書らに手渡ししていたとも報じられている。これは資金の流れが表面化しないように“証拠隠し”が行われていたと疑われても仕方がない。
江田氏が危惧する通り、このまま日本が「脱税天国」になりかねないと懸念する国民は少なくない。