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日本のアカデミズムの一部には「台湾を親日と呼ぶ」ことに違和感を感じる人々もいます。私も、台湾と日本との間の複雑な歴史を知らずに、単純に「親日、親日」と有り難がるのはどうかと思います。
しかし、世論調査を見れば分かるように、台湾での日本の好感度は高いものがあります。その客観データをもとに「親日」であると論じることは事実に基づいているので、何ら問題はないでしょう。「日本に強い好感を持つ社会」などと言い換えてもいいですが、それも面倒です。大事なのは、外国人が他国の人々の思いを政治的な立場やイデオロギーに基づいて強引に論じないことです。
データをご紹介しましょう。台湾の大使館にあたる日本台湾交流協会が何年かに一度行っている台湾の対日世論調査があります。
2021年度の調査によれば、「あなたの最も好きな国はどこですか」という質問に対して、60%の人が「日本」と答えています。第2位は意外ですが「中国」で5%、第3位は「アメリカ」で4%。基本的に日本がぶっちぎりで好かれていることは間違いありません。
アメリカは台湾では意外ですが人気がありません。歴史的にアメリカから持ち上げられたり、裏切られたりと、いろいろ嫌な体験もあったからでしょう。頼りにしているけれども、好きかどうかは別というところがあるのです。それに比べて、日本は、安全保障や外交などの利害が大きくは絡まないからこそ、シンプルに「好き」と言ってもらえるのかもしれない。有り難いことです。
■台湾と日本に共通する「おもてなし」
他方、今の日本も「親台」と論じてもまったく問題はありません。日本人の台湾旅行は増加して、2019年に台湾を訪れたのは約217万人(台湾交通部観光局調べ)となり、同年のエイビーロード・リサーチ・センターの調査によれば、人気旅行先のトップに5年連続で台湾が選ばれています。
こうした変化には、海外旅行というものに対する日本人の価値観が変わってきたことが要因となっています。ひと昔前であれば、海外旅行は何がなんでも欧米へ、という感覚がありましたね。しかし、近年は旅のなかで自分がどんな時間を過ごすかが目的になってきた。限られた休暇のなかで、自分がエンジョイできる空間を欲するようになったわけです。となると、台湾の狭い国土がマッチした部分があったのではないかと思います。
また台湾旅行が人気となるもう一つの要因として、台湾ならではのホスピタリティも挙げられると思います。台湾には「好客(ハオカー)(hào kè)」という言葉があります。日本語に訳すと「おもてなし」に近い意味になるでしょう。日本もおもてなしの国と自称していますが、台湾の好客とはちょっと違います。
日本のおもてなしといえば、一律に礼儀正しい対応が求められますが、これは見方によっては形式的な冷たいものに映ってしまうこともあります。一方で台湾の場合、かたちは二の次にして、とにかく徹底的に相手がもういいと思うほどまでもてなす態度を大事にする。そうしたサービス精神が、訪台客の心をつかむポイントかもしれません。