災害時も被災者が性別を問わずできる限り不安のない暮らしを続けるために、行政は普段から、どれだけ想像力を働かせて準備しているかが問われる。能登半島地震の避難所を訪ねると、一定の備えはあるものの、女性ならではの悩みが聞こえた。一方で女性職員の配置を増やし、備蓄などのあり方を改善する自治体もある。(渡辺真由子、加藤豊大)
◆生理用品は受け取れたけど…
1月中旬から、石川県珠洲市と能登町の避難所を取材した。珠洲市のある避難所には「生理用ナプキンやオムツを配布しています」と張り紙があった。地震発生直後から活用されたらしく、40代女性は「1日夜に避難所に着いて、まずナプキンをもらいに行った。2、3日分を受け取れて助かった」と感謝していた。
支援物資にはブラジャーなど女性向け下着も含まれていた。ただ能登町の避難所で過ごす女性(51)は「ブラジャーはS、M、Lのようなおおざっぱなサイズ分けで、合う物がない。最初は無理やり着けたが、しっくりこないので今は着けていない」とこぼした。女性向け下着が足りず、珠洲市の女性(71)は「男性用のももひきとパンツをはいている」と明かした。
◆洗濯した下着を乾かすにも悩みが
下着は、洗濯後に乾かす際も悩みの種。能登町の女性(47)は「段ボールの間仕切りに隠すようにブラジャーを干しているが、目立たず乾かせるカップ付きキャミソールの下着がほしい」。川で洗濯して自宅で干し、避難所に持ってくる人も少なくなかった。
物資の管理など避難所運営を担っていたのは市町の男性職員や自治会の男性が中心で、女性は受付で見かける程度。男性が担当の場合、生理用ナプキンの受け取りに抵抗感があったり、下着の困り事を相談するのにちゅうちょしたりする女性もいた。
◆更衣室も授乳スペースもなく「どうしているんかな」
更衣室や授乳スペース、子ども向けの遊び場がないところがほとんど。粉ミルクや、間仕切りもない避難所も見られた。ある避難所の男性本部長(70)に女性の着替え場所や子連れへの配慮を聞くと「いやぁ、考えたこともなかった。どうしているんかな」。
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◆避難所を開設した12市町の半数で女性の防災職員ゼロ
内閣府の調査によると、能登半島地震で被害が大きかった石川県の19市町のうち、防災・危機管理部局に女性職員が1人もいない自治体は10市町。避難所を開設した13市町では、半数近い6市町で女性ゼロだった。
被害が大きかった能登地方の9市町では、珠洲、輪島、七尾の各市と中能登町が「女性ゼロ」。他の市町も割合は違うが、女性は1人だけ。県内の全市町で防災・危機管理部局の女性管理職はいなかった。
また、地方防災会議の女性委員割合について、石川県内で政府目標の30%を達成しているのは野々市市(33.3%)のみ。大半が20%を下回り、輪島市は職員とともに女性ゼロだった。(榊原大騎)
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男女平等の達成度を測るジェンダー・ギャップ指数で日本は昨年、調査対象146カ国中125位で過去最低でした。1カ月後の3月8日は国連が定めた国際女性デー。本紙は「ジェンダー平等ともに」のワッペンで、性による格差や偏見を見つめ直し、誰もが生きやすい社会への道しるべを探します