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中国経済、ついに「万事休す」…格下げ連発で債務の肩代わりも不可能、事実上の「財政破たん」へまっしぐら
昨年12月、米国の大手信用格付け業者“ムーティーズ”は、26の地方融資平台(地方政府傘下の資金調達目的の企業)の格付け見通しを“ネガティブ(弱含み)”にした。
1月25日、その内の17社の信用格付けを引き下げた。その背景に、不動産バブル崩壊で地方政府の財政は悪化したことがあった。
今後、融資平台の信用力に一段と下押し圧力がかかる懸念は高まる可能性がある。
1月26日、山東省政府傘下の“濰坊浜海投資発展(ウェイハン・ビンハイ)”は、債務の返済延期で債権者と合意したと報じられた。
4億7900万元(約98億5000万円)の返済期限が先送りされたようだ。中国の省・自治区・直轄市の中で、山東省は3番目の経済規模を誇る。
経済規模がぜい弱な地方の融資平台はさらに厳しい状況になったとみられる。
財政破たんのリスク高まる
中国の不良債権管理会社の信用リスクも高まった。不良債権管理会社が、政府系ファンド(SWF)の中国投資(CIC)に統合されるとの観測もあるものの、不動産や地方政府などの不良債務問題がどう解決に向かうか見通しづらい。
当面、中国経済全体で信用不安は追加的に高まる恐れがある。
2020年8月以降、ムーディーズなどの大手信用格付け業者は、中国の民間不動産企業の格付けを引き下げた。
昨年12月、ムーディーズは中国政府(中国国債)の格付け見通しも“ネガティブ”に引き下げ、今年に入って17社の地方融資平台の格付けを引き下げている。
地方融資平台の格下げは、中国全体で信用不安が想定以上に高まっている証左とも得言えるだろう。ある種の警告と解釈できる。
ムーディーズは、不動産バブル崩壊によって地方政府の歳入は減少し、財政破たんのリスクも上昇したとみている。
地方政府が融資平台の債務を肩代わりすることは事実上むずかしい。残る9社の格下げリスクも高い。
1月4日、欧州系格付け会社のフィッチ・レーティングスは、不良債権管理会社4社も格下げした。ダウングレードされたのは、中国信達資産管理、中国東方資産管理、中国華融資産管理、中国長城資産管理だ。
各社が保有する資産価値の追加的な下落懸念は高まった。格下げ発表時点で、習政権による公的資本の注入など支援措置がどうなるかも不透明だった。
25日、ムーティーズも4社の信用格付けを引き下げた。最大手格の政府系企業である中国華融資産管理は、投機的等級の“Ba1”(ダブルBプラス相当)に格下げした。
本来であれば、不良債権の管理会社はバブル崩壊の後始末のため、強固な財務基盤を持つ必要があるのだが、なかなか実現は難しいようだ。
中国政府が本当の意味で不動産バブル崩壊の深刻さを理解しているか懸念する投資家は増えているとみられる。1月下旬、中国・香港の株式市場はかなり不安定に推移した。
今後、中国の信用問題はさらに深刻化する可能性は高い。ムーディーズが融資平台の格下げを発表した翌日、山東省の融資平台の濰坊浜海投資発展(ウェイハン・ビンハイ)は、中国民生銀行など債権者と返済期日の延長に合意したと報じられた。
おそらく、中国政府は返済の先送りを余儀なくされたと考えるべきだろう。
重要な要因は、“暗黙の政府保証”だ。地方融資平台向けの貸し出し債権は、シャドーバンクなどが組成・販売する“信託商品”に組み入れられ、個人投資家などが購入した。
破産したシャドーバンク大手、中植企業集団の信託商品の購入者が約束通りの返金がないとして抗議してデモを起こした。
それは、暗黙の政府保証を思い込む心理を象徴する出来事だったかもしれない。
(略)
山東省や中国政府は融資平台の返済期限を延期する以外、効果ある方策を見いだせていないのかもしれない。
ただ、未来永劫、返済を先延ばし続けることはできない。どこかで債務は返済しなければならない。
これまでの中国政府の経済政策で、短期間のうちに、景気が回復するとも考えづらい。
大手信用格付け会社による融資平台などの格下げを踏まえると、当面、中国の信用不安は高まらざるを得ないだろう。
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)
https://news.yahoo.co.jp/articles/d6fe347a63db6bdc45f1621a59cf98f6308ff2bd?page=1