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「もう世に出てくるな」芦原妃名子さん死去で関係者に中傷続出 投稿消しても法的責任は消えず
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『セクシー田中さん』の原作者で、漫画家の芦原妃名子さんが亡くなったことをめぐり、ドラマ化で関わった脚本家やそのSNSにコメントを投稿した人に対する誹謗中傷がネット上で相次いでいる。
同作のドラマ化で脚本を務めた相沢友子さんのSNSにコメントをした写真家の泉美咲月さんは、「芦原先生の訃報を受けて、ファンと思われる方から『人殺し』『もう世に出てくるな』『詫びろ』という恫喝の言葉や、身に覚えのない『なぜ芦原先生を攻撃した』という内容のメッセージが多々届く」とSNSに投稿。「寄せられる言葉に恐怖すら感じております。今や家族も身の危険を感じております」と心情を吐露している。
相沢友子さんのSNSは1月31日時点で非公開となっており、泉美さんのコメントも確認できない。泉美さんによると、「ドラマが終盤になって流れが変わったように感じていたこともあり、素直にその投稿の感想を書きました」とし、「『尊厳』と明記したことは、多々ある制作事情の上で両先生のご事情を察して明記したものでした。書き手、作り手というのは、皆さま孤独なもので、それを察しての発言で、それ以上でもそれ以下でもありません」と記している。
泉美さんのコメントに対してはXなどでも様々な投稿がされているが、誹謗中傷や泉美さんの言う恫喝の言葉を投げかけたSNSでの投稿やアカウントは、投稿者本人が今後「消して逃げる」可能性もある。
泉美さん自身は法的措置などについて言及していないが、誹謗中傷に当たる投稿やアカウントを消せば、法的責任から逃げきれるのか。清水陽平弁護士に聞いた。
●投稿やアカウント削除されても開示請求は可能
——被害者が投稿主の損害賠償責任を追及するためにはどうすればよいのでしょうか。
損害賠償請求などの法的な措置をとるためには、投稿者の氏名と住所が必要になります。そのため、「発信者情報開示請求」で、匿名掲示板やSNSに誹謗中傷する投稿をした人物を特定します。
——誹謗中傷するSNS上の投稿やアカウントが消えても、発信者の特定は可能ですか。
発信者情報開示請求では、特定をしたいと考える側(被害者側)が、「どこに(URL)」、「どのような」投稿が、「いつ」されたのかを証拠として提示する必要があります。
証拠が残っているようであれば、アカウントが削除されていても開示請求をしていく余地があります。
——証拠を確保する上で重要なことは何でしょうか。
SNSの場合、アプリで見ている方も多いと思いますが、アプリだとURLが表示されません。また、タイムラインだと投稿日時が分からないことが普通です。そのため、できる限り、PCを用いて個別の投稿ごとにPDF出力をしておくのが良いといえます。
そのような余裕がなければ、ひとまずキャプチャを取っておくのでも、証拠がないよりはマシといえるでしょう。
また、発信者情報開示請求はいつまでも可能というわけではなく、アクセスログが保存されている間に行う必要があります。
保存期間は基本的に公表されていませんが、それほど長い期間ではないので、1カ月以内に動き出さないと間に合わない可能性が高くなってきます。
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:https://www.alcien.jp
「悲劇的な事件に関わる中で、関係者を中傷し続ける人々は、誰かが亡くなったことに対する尊厳と敬意を欠いています。もし自分がその立場に立つことを想像してみてください。感情的なコメントを投稿する前に一度冷静になるべきです。」
「投稿者は、自分の行動に責任を持たなければなりません。インターネット上の匿名性が誹謗中傷をするための盾になるべきではありません。私たちがより共感し、理解し合う社会を築くために、相手を尊重することが重要です。」