〈鬼滅の刃、遅ればせながら夫と鑑賞してたんだけど、中盤、女の子のキャラの胸が強調されたコスチュームが多くなってきて、案の定、夫に『なんで、日本のアニメって、女の子の胸が強調されてるの?』って言われて、答えられなかったけど、この人はまともな感覚を持ってるんだな、って安心した〉
国内最大級の旧ツイッター(現X)まとめサイト「togetter」で先週、そんな投稿が話題になっていた。
米国人と結婚したとおぼしき日本人女性のポストなのだが、SNS上ではカンカンガクガクの議論に。
〈成人と子供の区別、かつキャラクターのデフォルメ〉〈別に胸を強調してても良くないですか〉〈別に胸を『強調しなくても』良くないですか〉〈ただの美的感覚の違いじゃないですか〉
今さらだが、「鬼滅の刃」は2016~20年に週刊少年ジャンプで連載された大人気コミックで、19年にテレビアニメ化されて一大ブームに。20年公開の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入は404億円超えと日本歴代トップ。世界的にヒットした。
「確かに主人公の炭治郎の妹で“鬼化”した禰豆子なども設定は10代前半なのに、胸元を開いて谷間を強調して描かれています。が、70年代の『キューティーハニー』とか80年代の『まいっちんぐマチコ先生』など“お色気”が売りの漫画を見て育ったベテラン世代からすると、あの程度は全く気になりませんが……」(中堅出版社編集者)
■日本も性的な表現に敏感に
もっとも、それは国内に限った話で、その日本も性的な表現にうるさくなってきている。
「お色気漫画、アニメは日本の伝統芸みたいなもので、『鬼滅の刃』ぐらいの表現はスルーする人もいるでしょうが、幼少期に健全なディズニーアニメで育った米国人にすれば、『なんで?』と疑問に思うのも当然でしょうね」と映画批評家の前田有一氏はこう話す。
「たとえば米国の実写の撮影現場には、セクハラなどハラスメントの専門家が入るようになっています。それほど性的な表現に慎重になっている。そうした世界の潮流にはもう抗えません。日本のアニメが国内で細々とやるつもりなら、胸を強調したコスチュームも日米の文化の違いで済まされるかもしれませんけど、グローバルな展開を考えたら、路線変更もやむなしでしょうね」
表現は自由だが、自由にも制約がある。禰豆子のような胸の谷間も消滅する運命か。