――韓国の少子化の現状をどう見ていますか。
◆世界にも例を見ない急速な速度で合計特殊出生率が落ちて、経済協力開発機構(OECD)加盟国で最下位になっている。日本の合計特殊出生率も22年に1・26と過去最低を記録した。でも、韓国と比べると、その数字へと至った速度はゆるやかだ。もしかすると、幸せに衰退する方法も見つけることができるかもしれない。ところが韓国は、このまま少子化が進むと国そのものが墜落してしまうような状況だ。
◆社会のあちこちで、さまざまな問題が確実に出てくる。経済への悪影響はもちろんだし、安全保障面も深刻だ。北朝鮮と向き合っている韓国は、18歳以上の男性国民に兵役を義務づけているが、軍人の確保さえ難しくなる。子どもの減少に伴って、学校の廃校も相次ぐだろう。国がなくなるかもしれないというぐらいの大きな危機だ。
「それなら、海外から人材を受け入れて労働力を確保すればよい」との意見もある。しかし、これまで外国人労働者を供給してくれていた東南アジアの国々でも合計特殊出生率が下がっている。家政婦などとして働き、韓国社会を支えてきた中国国籍の朝鮮族の人たちも高齢化が進んでいる。簡単な話ではないだろう。
――合計特殊出生率は反転できますか。
◆難しいからこそ、ショック療法が必要だ。たとえば、結婚しているかどうかは関係なく、子どもが生まれた家庭には公共住宅を提供したり、子どもが18歳になるまでは1人あたり月100万ウォン(月約11万円)を提供したりするなどの生活保障が想定される。「子どもを産んでも、幸せに生きることができる」と、若い世代に確信してもらえるだけの少子化対応が必要だ。
――「少子化問題を5年以内に解決しなければ、地球上から消える最初の国になる」との刺激的な意見広告も出しました。
◆このまま少子化が加速すれば、私たちの子どもたちは、今の私たちよりも豊かな生活を送ることは絶対にできない。「厳しい未来に耐えなければならない」ということに国民的な合意をして、その未来に向けて、より良い準備をしなければならない。拡張していく社会と、縮小していく社会のルールはあまりにも違うからだ。そうした変化に合わせた意識改革をしないといけないというメッセージを意見広告には込めた。
――少子化の進行や人口減社会における企業の役割も重視しています。
◆「人口動態の変化を最前線で引き受けているのは企業ではないか」という問題意識が、この研究院を約1年前に発足させるきっかけになった。韓国の中小企業はすでに深刻な人手不足に直面し、一部の大企業でも同様だ。政府もさまざまな取り組みを進めているが、企業にできる対応についても考えていきたい。