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中国の恐るべき台湾統一シナリオ 軍事侵攻せず「知能戦」という戦い方 日本は準備はできているのか 八木秀次
特に、ロシアのウクライナ侵攻と、中国が仕掛けようとしているとされる「台湾有事」の行方が左右される。
ロシアではウラジーミル・プーチン大統領の再選、ウクライナでもウォロディミル・ゼレンスキー大統領の再選が見込まれている。仮にゼレンスキー氏が落選し、ロシアに宥和的な候補者が当選すれば、ウクライナ情勢は大きく変わる。ロシアは当然、選挙干渉してくるはずだ。
ゼレンスキー氏が勝つとしても問題は勝ち方だ。圧勝でない限り、政治力は落ちる。戦争が長期化し、支援する欧米諸国も疲れている。国民の戦意を維持し、他国に多額の財政支援をさせるだけの政治力を持たせなければならない。
ウクライナ情勢は、「自由で民主主義的な政治体制を、権威主義体制の脅威からどう守るのか」という普遍的なテーマに関わる。日本も無関心ではいられない。当然、「台湾有事」とも直結する。
ウクライナに日本から関心・同情が集まったのは、21世紀の近代都市が無残にも廃虚にされ、子供さえ虐殺されたことへの怒りだけではなかった。ロシアの権威主義に屈すれば、中国を勢いづかせ、台湾が併呑される。その際には日本も巻き込まれる。「有事を誘発させてはならない」との思いがウクライナ支援につながった。
台湾の総統選挙では、中国と距離を置く民進党の頼清徳副総統が当選したが、立法院(国会に相当)では与党は過半数を割った。だが、大きく言えば、「現状維持」となった。
中国は台湾併合に向けて「祖国統一戦争」を仕掛けようとしている。習近平国家主席は必ずやり遂げる覚悟でいる。
カウントダウンはすでに始まり、11月の米大統領選挙の結果を見て本格化させると指摘されている。ドナルド・トランプ氏が大統領に復帰すれば、世界情勢、中でも台湾問題に関心のないトランプ氏が習氏と取引し、米国の商品を中国に買わせる代わりに台湾併呑を認めるのではないかとの見方がある。その際、軍事力を直接使った併呑ではなく、軍事力を背景にした「平和的」な話し合いでの併合が予測されている。台湾海峡は中国の内海になり、多くの船舶を航行させている日本にも大きな打撃になる。果たして、日本には最悪のシナリオを避けるための準備と対策はできているのか。それとも台湾の人々を見捨てるのか。
夕刊フジ 2024/1/28 10:00
https://www.sankei.com/article/20240128-NXWLTXLV3ZDFHNQLPIPTK44VLY/?outputType=theme_weekly-fuji