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「未知のメトロ車両群!地方鉄道が求める“隠れた宝”」- 東京メトロの中古車の魅力に迫る
群馬県の上毛電鉄が、東京メトロで廃車となった03系の導入を発表しました。これで03系は熊本電鉄や北陸鉄道など計4社に譲渡されることになったほか、台車のみなど部品単位での譲渡も。なぜここまで東京メトロの車両は人気なのでしょう。
中小私鉄にぴったりな18m級アルミ車両
中小私鉄にとって新型車両の導入は大きな投資を伴います。たとえば2023年11月、伊予鉄道が新型車両の導入を発表しましたが、その額は18両で約39億円。1両当たり2億1600万円ほどになります。
そこで中小私鉄が検討するのが中古車両です。こちらは額こそまちまちですが、現在はおおむね1両当たり1億円程度。新車の半額程度で導入できます。
大手私鉄にも中古車両譲渡に熱心な会社とそうでない会社がありますが、なかでも東京メトロ(旧営団地下鉄)の車両は、様々な地方の鉄道で見ることができます。なぜ東京メトロの車両が重宝されるのでしょうか。
人気の理由としてまず挙げられるのが、車両の長さです。
現在、首都圏の車両は全長20mが主流です。18m級、あるいはそれ以下の車両を運用しているのは京急電鉄や京成電鉄、東京都交通局、東京メトロ、東急電鉄のうち一部路線と少数派です。しかし中小私鉄では逆に、18m級の車両を欲している会社が多くあります。
東京メトロ日比谷線の03系電車は、新型13000系電車の導入で全車両引退となりましたが、熊本電鉄、長野電鉄、北陸鉄道の3社に譲渡されています。さらに上毛電鉄にも2024年から導入されることが発表されました。
これらの中小私鉄に譲渡された大きな理由のひとつが、03系が18m級のアルミボディであるという点です。一般的に鉄道車両は、軽ければ軽いほど軌道への負担が小さくなります。軽くて短い03系は車輪1軸にかかる重量が小さく、保守費用の低減が見込めます。加えて車体がアルミでできているため腐食の心配がなく、塗装も省略できて耐久性が高く、運用コストの低減が可能です。
充実したサポート体制 中古車両でも大事
また、首都圏で主流の20m級4ドアというフォーマットは、大量の旅客を輸送するには絶大な効果を発揮しますが、輸送人員がそこまで多くない中小私鉄では過剰設備です。しかも大きさの割に座席が少ないというデメリットが発生します。たとえば03系先頭車の座席定員は44名ですが、同じ東京メトロの電車で20m級の10000系電車(副都心線など)の先頭車は48名。車体の大きさの割には座席数が増えていないことが分かります。
このような点も、コンパクトで座席数もそれなりに確保できる18m級3ドア、とりわけ03系に人気が集まる理由といえます。03系だけでなく、元・銀座線の01系電車が熊本電鉄に譲渡されたのも、「小型で熊本電鉄の輸送事情にマッチした」ためです。
東京メトロの車両が他社で活躍しているもうひとつの理由として、メトロ車両や東京メトロの技術陣の存在が挙げられます。メトロ車両は東京メトロの子会社で、車両基地の設備工事や車両の改造を行っています。実際にはメトロ車両の協力会社によって改造される場合もありますが、いずれにせよ中古車両の「現状渡し」ではなく、それぞれの鉄道会社向けに整備したうえで納車するため、人材やノウハウをあまり割けない地方の鉄道会社にとっては「価格以上」の価値を見出すことができます。
また、譲渡後に営業運転に就いてからも、車両検査を行う際にメトロ車両のサポートが受けられるのも大きなポイントです。しかもサポートは国内の鉄道だけでなく、インドネシア通勤鉄道に売却された車両でも、整備マニュアルや部品調達のノウハウを、東京メトロOBが行っています。
こんなところに元・営団!?
もっとも、大手会社は所有する車両の絶対数が多い点も見逃せません。新型車両を導入すればその分、廃車もたくさん発生します。中小私鉄にとっては手ごろなサイズの車両を大量に入手できる機会であることも、結果的に多くの東京メトロの車両が他社線で「第二の人生」を歩むことにもつながったのです。
ところで、譲渡された車両の中には一見すると東京メトロの車両には見えない「元・東京メトロ」の車両も存在します。それは富士急行線で「富士登山電車」として運行している1200形です。
姿かたちは元・京王電鉄5000系電車なのですが、実は台車とモーターは日比谷線の初代車両である営団3000系電車のものを装備しています。これは京王線の線路幅が1372mmである一方、富士急行線の線路幅は1067mmと合わないため、足回りのみ3000系へ取り換えたのです。こういった一部分だけの譲渡は、ほかにも大井川鐵道や長野電鉄、富山地方鉄道でも見られました。
3000系は304両も製造されて予備パーツも多く確保できるため、整備体制を充分に確保できない中小私鉄にとっては修繕に際しても大きなメリットです。実際、長野電鉄では約30年の長きにわたって3000系を運用できました。
2023年12月現在で発表されている元・東京メトロ車両の譲渡計画は、上毛電鉄向けの3編成6両で一段落といった感じですが、「一部のみ譲渡」といったケースは今後もあるかもしれません。
大手私鉄にも中古車両譲渡に熱心な会社とそうでない会社がありますが、なかでも東京メトロ(旧営団地下鉄)の車両は、様々な地方の鉄道で見ることができます。なぜ東京メトロの車両が重宝
東京メトロ日比谷線の03系電車は、新型13000系電車の導入で全車両引退となりましたが、熊本電鉄、長野電鉄、北陸鉄道の3社に譲渡、上毛電鉄にも2024年から導入されることが発表されました。
記事に対するコメント
「東京メトロの中古車を地方鉄道が欲しがる理由に納得です。東京メトロは非常に高品質な車両を保有しており、その技術やデザインは他の地方鉄道でも活用できると考えられます。また、中古のメトロ車両を導入することでコスト削減も可能です。地方鉄道の発展に貢献する一環として、メトロ車の譲渡が行われることを期待したいですね。」
「隠れメトロ車が存在するとは驚きですね!これらの特殊な車両は地方鉄道にとって非常に貴重な資産となることでしょう。例えば、トンネル内での安全性やパワフルな加速など、特殊な環境での運用に長けているメトロ車は、地方鉄道に新たな運行路線を開拓する機会を与えることができるでしょう。地方鉄道の活性化に資するためにも、これらの隠れメトロ車の譲渡が行われることを期待しています。」
「東京メトロの中古車を地方鉄道が欲しがることに納得です。地方鉄道で使用される古い車両は、設備や保守等が追いついておらず、利便性や快適性に欠けることがあります。それに比べて東京メトロの中古車は、最新テクノロジーや高品質な設備を備えており、乗客の利便性や快適性を向上させることができます。また、地方鉄道にとっては高価な新型車両を導入するよりも経済的で効果的な選択肢となるでしょう。地方鉄道の発展と利用者の満足度向上のためにも、東京メトロの中古車の譲渡を推進してほしいと思います。」