佐々木被告は22年7月21日午後6時30分ごろに秋葉原の路上で、暴力団組長の山中健司さん(当時34歳)の左腹部を刃渡り22センチの牛刀で刺し殺害。佐々木被告と山中さんの間にはみかじめ料をめぐるトラブルがあった。2人は14年ごろに、たまたま居合わせた居酒屋で意気投合し友人関係になり交流するようになった。17年に山中さんが暴力事件を起こし逮捕され、佐々木被告は拘置所に本などの差し入れをしていた。
しかし釈放後、山中さんの態度が一変。ガールズバーなどのコンサルタント業を営んでいた佐々木被告の店に訪れ、みかじめ料を払うように要求。断ると暴行を受けた。さらに差し入れした際に当時住んでいた実家の住所を書いてしまったことで住所がバレ、両親と妻子に危害を加えると脅されるようになった。
山中さんは周囲に佐々木被告を「コイツは俺のポケモン。命令すれば何でもやる」と吹聴し、連れ回していた。お金が払えなくなると佐々木被告は母から約2400万円、妻から約1100万円を借金し、総額で約1億2000万円を渡した。暴力と脅しによる恐怖の主従関係に耐えられなくなった末の犯行だと供述した。
一方で、山中さんの妻は「佐々木は(夫の)1番の親友でした」と証言し、両者の主張は真っ向から対立。「佐々木被告は起訴内容を認めており、量刑の判断となる2人の関係性が焦点でした」(法曹関係者)
ポケモンか親友か。注目の判決は懲役7年が言い渡された。裁判長は判決理由について「両親や妻子を殺すと脅され支配関係にあった。多額の金銭を要求され困窮し絶望し、衝動的に犯行に至った」と背景を考慮した。
山中さんの妻が「佐々木、覚えてろ!」と叫び、警備員から制止されるなか佐々木被告は退廷した。